約 134,148 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/3308.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記 両片思い篇 新学期 上条当麻は自分の美琴に対する感情の正体を知った。 だからといってすぐ行動できるわけではない。 だって (告白して、成功するイメージができない!!! 難易度はフィアンマやっつけるほうが簡単!!) この心の声を聞いたら間違いなく、上条はフィアンマに殺される。 (どうやったら振り向いてくれるだろう? ) すでに彼女がてめぇしか見えてないことに気付かない上条。 勝手に勝率を低く設定し、泣きながら教室の扉を開いた。 去年とほぼ変わらない面子が、一斉に上条の方を向く。 上条は挨拶ができる偉い子なのだ。 「おはようございます」 もちろん小萌は 「おはようではないのです!! 初日から遅刻とか学校をなめすぎなのですよ !! ちょっとこっちに来るです!!」 と、いおうとした。 が、実際は「おはようではない」という言葉の途中で黙ってしまう。 ガタタッ という音と共に、3人の生徒が同時に立ち上がったからだ。 吹寄、青髪、姫神はそのまま上条に向け走り出す。 まず吹寄がボディを決めた。 くの字に曲がった上条に、青髪はアッパーを繰り出す。 とどめに姫神が魔法のステッキで殴り付けた。 上条ダウン。 一年戦争で名を馳せたジェットストリームアタックだった。 もちろん小萌は「なにやってんのー!!」と叫ぶ。 しかし、姫神がボソボソと耳打ちすると、担当教師はてちてちと上条にかけより、 「ていっ」 と頭をはたいた。 軽いパワハラだ。 もちろん、土御門は訳がわからない。 再び姫神がボソボソと耳打ちする。 そして、嘘つきは笑って言った。 「あー、そういえば、カミヤンは他に美人のお姉さんも振ってたぜい」 ガタタタッガタタタタッ と全男子が立ち上がる。 彼らが走って来るのを見た上条が「あぁ、美琴、時が見える」と言ったとか言わなかったとか。 その美琴を固法は見ていた。 お昼時の風紀委員第177支部で、彼女はただ同情するばかり。 「あうあう」 「そろそろ、白状してもらおうか、御坂さん」 わざわざ照明を落とし、机の上のライトを美琴に向けている。 顔を真っ赤にした美琴の正面。 佐天涙子はいつもは微塵もない落ち着きを見せていた。 ノリノリである。 部外者2人なんだが、なんか今更だ。 美琴の斜め後方では、黙々と初春が書記の仕事をしている。 ノリノリである。 で、どっから持ってきたそのカツ丼? 「いい加減、吐いて楽になったらどうですか?」 「あうあう」 「あうあうじゃわからないです。固法先輩が証人ですし、知らないなんて言えませんよ?」 固法は思い出す。 始業式が終わり、ここに向かう途中だった。 そこで今あうあう言ってる子に声をかけられた。 しかも第一声が、 「どうやって黒妻さんを落としたのか教えてください!! やはりその胸部に食いついたんですか!!」 だった。 は? と言ったら眼鏡が落ちそうになる。 しかし、彼女は真剣だ、アホなことに。 頬を紅潮させてるため、残念ながら、言ってることもわかっているようだ。 しかし、目はまっすぐこっちをみている、馬鹿馬鹿しいことに。 正直固法は困った。 本人に聞いてほしい。 いや、聞かないでほしい。 さて、先輩らしくごまかさねば、 自分の魅力を磨いたほうがいい? いや、逆にキズつけるか。 あの人は中身をみてくれた? いや、ただのノロケになる まったく、いったいなんでこんな面倒な質問を…………ん? 「「どうして急にそんな質問を?」」 あれ? ハモった。 気付くと美琴がガクガク震えている。 自分の後ろを見て。 振り替えると、フッフッフと悪役の顔で笑う佐天と初春がいた。 バンッと机が叩かれた音で、固法の意識は今の時間に戻る。 佐天はあの時と同じ表情で美琴に詰め寄っていた。 「往生際が悪いですよ!! さっさとしゃべってください! 上条さんを落としたいんですよね!!」 「も、黙秘権を行使する!!」 「……話してくれたら、上条さんの好きなタイプを聞いてきてあげますよ」 「ホント!!?」 「やっぱりそうかぁぁぁあああああああ!!」 「し、しまっ!! も、黙秘権を行使する!!!」 わいわい、騒ぐ後輩をしり目に、 固法は窓から青空を眺めた。 「平和ねぇ」 平和だと? 冗談ではない。 ここに、戦場から帰還した戦士がいる 「お、オレがなにしたっていうんだ」 帰宅途中の上条は不満をこぼす。 姫神を怒らせることをした記憶はまったくない。せいぜい悩みを聞いてもらったくらいだ。 美人のお姉さんを振ったなんて冤罪もかけられた。 「そんなイベントはなかったはずだよなぁ」 あったのはある少女と赤ちゃんとの共同生活くらいで…… また、頭から湯気が出る。 そのまま犬の尻尾を踏みつけて、あちこちに歯形をつけることになった。 この痛みも懐かしいね。 上条は昨日から満身創痍である。 結局宿題が大量に残った夏休み最終日。 数少ない休憩時間に、ステイルを外に連れ出した。 『お前に、インデックスに関して聞きたいことがある』 そう彼に伝えると、向こうも面倒だという表情が消えて、真剣な目になってくれた。 ステイルは無言で先を促す。 『お前って……片思い歴、長いよな』 パチパチと、彼はまばたきした。 ん? 何だって、だと? 聞こえなかったか、それとも意味が伝わってなかったか、 じゃあもう一度いおう。 『だから、お前ってうちのインデックスにずっと片思いしてんだろ? 実はオレも最近、み、みこ、御坂に片思いしてて、片思い歴の長いお前に先輩としていろいろ教えてほしいといいますあぎゃぁぁあああああああああ!!!!』 いつの間にかイノケンさんが目の前にいた。 真っ黒に焦げて、なんの手掛かりもなく自分は帰ることになった。 驚きの顔で出迎えてくれた美琴を思いだし、そんだけでまた顔が赤くなる。 でも、彼女はなんで自身の頭と同じサイズのタンコブを作ってたのだろう? (なんであの時の当麻は焦げてたんだろう?) そう疑問を抱いているのは、御坂美琴。 つい先ほどまで佐天にいじられ、ボロボロになっている。 いや、わかっている。 第三者に自分の気持ちをいえないのに、本人に伝えられる訳がない。 でも、 (今のままじゃ、全盛期の一方通行に勝つより勝率が低い) とりあえず一方通行のファンには謝っといたほうがいいと思う。 恐らく、天罰だろう。 一方通行戦の上条を思いだし、ふにゃりかけた美琴は、ボールを踏んで噴水にダイブした。 風紀委員のお仕事体験以来だね。 まったく、美琴は昨日からさんざんだ。 すっかり忘れていた上条の宿題を、必死に片付ける合間。 休憩時間に上条がステイルと散歩に出てくれた。 その隙にインデックスと遊んでもらっていた神裂と対面する。 神裂は驚いた。 『神裂さん、聞きたいことがあるの』 神裂は、動揺を悟られないようにする。 彼女は、上条、美琴、インデックスのために身を引いた。 18にして初めて抱いたこの感情を、捨てる決意をした。 だから、感づかれてはならない。 彼女達の力になると、決めたのだから。 『どうしました?』 『どうやったら、そんなきれいな凹凸ができるんですか?』 『……………………は?』 『く、悔しいけど、神裂さん、メッチャクチャ美人じゃない!! 大和撫子の落ち着きも、む、胸のスイカもわたしに足りないものなの!! と、当麻も神裂さんみたいなのが、好みなのかなぁ、とか、いや、別に当麻は関係なくて、ただ私があこがれてるだけの話!! ど、どうやったら神裂さんみたいになれるんでガフッ!!』 神裂は無表情で、鞘に入れたままの刀を降り下ろしていた。 美琴は床に倒れ付している。 ついやっちゃったのだ。 いろいろ複雑な思いを持ってるのに、 目の前で、諦めたきっかけがこんなことほざいていたら、仕方ないとは思う。 どんどん膨らむタンコブに、インデックスはうー、と驚嘆していた。 鈍感な美琴は一切神裂の感情に気付いていない。 なんで殴られたのかなー、という疑問もその後すぐ帰って来た上条のことに思考が移る。 そんなとき、わかれ道で目の前にご本人登場。 ちょっと昔の自分なら、きっとあたふたして、八つ当たりでもしていたのだろう。 でも、今は違う。 「おっす、相変わらずボロボロね」 今はまだできないけど、この想いを伝える覚悟ができた。 「相変わらずってのは聞き捨てならんねぇ、いつも俺がボロボロみたいじゃねぇかそのとおりだチキショウ」 それに、 「はいはい、いじけないの。 で、これから、学校始まるけど、インデックスどうしようか?」 あの子が、私たちを繋いでくれている。 「ん? アイツらに頼むしかねぇだろ」 彼女は気付かない。 「そうねぇ、でも気が進まないなー」 隣にいる想い人も、同じように考えていることに。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2746.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者 第1章 ②一端覧祭を終えて 上条と美琴は上条の通う高校の廊下を腕を組んで歩いていた。 二人のそんな光景はこの高校の人間にとって割と日常風景となっていたため 一昔前のように嫉妬に狂った視線が向けられるということはない。 一端覧祭は俗にいうオープンキャンパスのようなものだ。 文化祭としての側面以外に各学校が入学希望者を募るに当たって学校の特徴をアピールするという意味合いが込められている。 だから各学校への見物客は基本的に知り合いを訪ねる以外は自分の希望する学校を訪ねるのが基本である。 もちろん美琴も上条の学校に将来的に通うつもりで来ているのだが、当の上条はあまり乗り気でなかった。 「なあ、美琴… もう分かったと思うけど、ウチの学校って見ての通り何の変哲もない普通の学校だぞ。 自分の学校を悪く言うのは心苦しいけど、特に設備が優れてるわけじゃないし進学校というわけでもない。 美琴が来るような学校じゃないんだって」 「…当麻は分かってないわね。 こうやって生徒の自主性に任せて基本的に自由な出展が認められてる。 エリート校なんて優秀な生徒を招くのにしか頭を使ってないから、出展の中身も真面目腐って面白くないのよね。 その点この学校は飾ることなく伸び伸びと文化祭として一端覧祭を楽しんでる。 中学校の文化祭なんて出来ることが限られてるから、実はこういう自由な雰囲気に憧れるのよ」 「そういうもんかね」 何となく美琴の言い分は分かる気がする。 というよりも友人の土御門と青髪ピアスも同じようなことを言っていた。 しかし記憶がなく初めての一端覧祭を迎えた上条には理解は出来てもイマイチ実感が湧かないのだった。 そんな上条の気持ちを察したのか美琴は謝るように言った。 「ゴメンね、当麻にとっては初めての一端覧祭なのに分かったようなことを言って」 「気にするな、美琴が楽しんでくれるならそれに越したことはないさ」 「…うん。 でも当麻の後輩かぁ、やっぱり上条先輩って呼ぶことになるのかな?」 「少し違和感を感じるけど、何となく美琴に先輩って呼ばれるとこそばゆい感じがするな」 「上条先輩!!」 「おいおい、からかうなよ」 今の二人の顔に悲壮感というものは漂っていない。 明日から一端覧祭の振り替え休日に入る。 そして振り替え休日を終えたら上条と美琴は旅立つことになっていた。 一方通行と垣根は「人間」の言葉を完全に信用することは出来ないため、万が一の時のために学園都市の防衛に残ることになった。 しかし上条はある決意と計画を固めてるのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1637.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/恋する美琴の恋愛事情 戸惑う美琴の放課後事情 「……はぁ」 常盤台からの帰り道、放課後にクラブ活動といった用事のない御坂美琴はいつもの帰り道を一人で歩いていた。しかも、その足取りは重い。普段ならば、自分を慕う白井黒子や初春飾利と言った面々が傍にいるのだが、残念ながら本日はジャッジメントの業務のためその姿はなかった。 しかし、足取りが重い理由はそれではない。先日の件が未だ尾を引いているのである。 「……なんで……なんであんな事言っちゃったんだろ……」 美琴は先日の遊園地での出来事を思い出す。 『私がアンタの事好きだって言ったら信じる?』 それはする予定がなかった筈の告白。恐らく、自分以外の人間が彼に想いを寄せていることが明らかになったがための焦りであり、美琴の中にある不明確な感情が生み出した結果。 だから、その時のことを思い出すと美琴の足取りは重く、気分は沈んでしまう。 「……はあ…私ってバカだ……」 何度目かになる後悔。そして、溜息。 いくつ重ねようが進展がないのに、何度つこうが目に進めないのに、美琴はそこに逗まる以外の手段を持ち合わせていなかった。 ******** 「アナタは上条当麻のことが好きなの?」 あの日、上条当麻とインデックスの二人を場所取りという名目で追いやり、3人で話し合いを持ったとき、胸の大きな少女――吹寄制理は開口一番、美琴にそう訊いてきた。 「……う、うん……ううん、違う」 一瞬の戸惑い。今の自分の上条当麻への気持ちを誰かに聞かせた事はない。だから、第三者である彼女たちに言うのも気が引けたし、それに美琴を見つめる吹寄の迫力に飲み込まれそうになったため、生返事になりそうになった。だけど、美琴の心に生まれたのは『負けられない!』という想い。目の前にいる彼女達と対等以上に渡り合ってやると、正面から睨み返し、はっきりと自分の心を告げる。 「私は……私は上条当麻が好き!」 そんな美琴の態度に吹寄はただ柔らかい笑顔を浮かべただけだった。 「そう。それは羨ましい事ね」 そして、次に長い黒髪の少女――姫神に向き直る。 「姫神さんは……聞くまでもないわね。同じく上条の事を――」 「うん。好き」 はっきりと言いきった。これに対して吹寄は苦笑いを浮かべる。知っていたこととはいえ、いや、それ以上に断言されてしまったのだから。 「貴女はどうなんですか?」 今度は美琴が聞く番だった。先ほどの様子から察すれば、この吹寄と言う少女も上条当麻の事を…… 「そうね。正直にいえば『わからない』かな」 しかし、予想外な答えが返ってきた。 「……バカにしてるの?」 今度は美琴が睨みつける番だった。自分は気持ちに正直に答えた。なのに、はぐらかすようなその回答に美琴の心に怒りが湧き上がる。好きなら好きと言えばいい。目の前の黒髪の少女のように。それを誤魔化すなんて信じられなかった。 「申し訳ない。バカにしているわけではないの。だけど、私には好きかどうかの判断が出来ない」 その言葉に嘘は無い。だから吹寄はまっすぐに美琴を見つめる。 「でも、上条に遊園地に誘われて嬉しかったことは事実だし、そしてそのことに浮かれてた事も認めるわ。だけど、これが恋かどうかは私にはわからないのよ」 先ほどまでと違って不安そうな表情。それを見て美琴は『ああ、昔の自分と同じなんだ』と理解する。 あの日、病院を抜け出し誰かのために戦おうとしているアイツを見て、それを止める事が出来なかった自分に残された感情が恋だと気づくまではわからなかったあの日の自分と同じ。恋を恋として自覚できない不安定な気持ちを抱えた状態。本当にアイツは何人の女性を苦しめる気なんだろう。 「……それを恋って言うんだと思うけど」 姫神がボソリと呟く。しかし、その呟きに美琴は目を見張る。それは自分の感情に戸惑った経験のある美琴にとって簡単に言える言葉ではない。 ああ、この人は強いんだな、と美琴は思う。外見がしっかりしている吹寄は恋に迷い、儚げな雰囲気の姫神は恋に突き進む。なんと対照的な構図だろ。こんな人が敵になるんだと思うと美琴は不安と同時に楽しみを感じた。 「それで?私達3人で集まって何をするつもりだったんですか?」 吹っ切れた表情で美琴が吹寄に問う。今更迷う事が馬鹿らしく思え、自分も負けたくないという美琴本来の気性が戻ってきていた。そう、負けない気持ちとそれを支える心の強さが美琴の武器なのだ。 「それが貴方の本性なのね。常盤台のエースさん」 なんだか嬉しそうに吹寄は美琴に微笑んでいる。どうやら吹寄は美琴の正体に気付いていたらしい。だからと言ってそれに対して後に下がるような吹寄ではない。むしろそんな人間が全力で向かってきてくれる事が嬉しいのだろう。 「それで、何をするの?」 姫神の表情は変わらないが、彼女もまた前に進むタイプなのだろう。全く動じる様子はない。 「多分、二人とも私と同じように上条の為にお弁当を作ってきたのでしょ?」 ニヤリと笑う吹寄に対し、ズバリ当てられた二人は顔を真っ赤にする。 「アイツにこのまま振り回されるのは私の性にあわないから、こっちから攻めてあげましょう」 どうやって?と美琴と姫神の頭上に?マークが浮かぶ。 「こちらがお弁当持って強気に出てやればアイツの事だ、勝手に自爆し、大慌てするだろうよ」 と、なんだか嬉しそう答える吹寄。その態度でさえ幸せそうに見えるのは気のせいか。 しかし、吹寄のその言葉通り、3人がお弁当を差しだし強気で迫った結果、上条当麻は混乱の極みになってしまい慌てるその姿を見て3人とも胸がすく思いだった。 食事の後「上条当麻、私たちを戸惑わせた罰だ。私達4人それぞれのための時間を作れ」という吹寄の命令により、当麻は吹寄、姫神、インデックス、美琴の順でそれぞれの乗りたい乗り物にペアとなって乗る事になった。そこで告白するも自由だったのだが、吹寄も姫神も告白しなかったようだった。だから、美琴の番となった観覧車でも同じようにただ同じ時間を過ごすだけにするつもりだった。なのに…… ******** 「あんな事言うつもりじゃなかったのに……」 自分の気持ちを吐露してしまった。他の二人はしなかったのに、自分だけが行ってしまった、まるで裏切りの気分だった。足取りが重くなるのも仕方がない事だろう。 「それに、結局……」 観覧車の中で自分が口にした台詞に驚いて慌てて口をふさいだが、既に後の祭り。当麻は驚きの表情のまま固まっていた。 「………」 「……は、ははは……冗談よ。冗談に決まってるじゃない。なに驚いた顔してるのよ?…それとも何?美琴さんがアンタを好きだって本気で思ったの?…はは…そんなわけ……ある訳ないじゃない……」 結局自分の気持ちを自分の言葉で押し潰してしまった。しかも、本心ではない言葉で。 美琴と当麻を載せたゴンドラが一番下につくまで、美琴は一人喋り続けた。会話の内容なんか覚えていない。もしかしたら、支離滅裂な会話だったかもしれない。それほどに美琴は自分の行動に慌て、消し去りたかった。 「……私って最低だな……」 その時の当麻の表情を美琴は見ていない。おそらく見ていたら、何も言えなくなっていただろうから。だから知らない――上条当麻がそんな美琴を辛そうな表情でい見ていた事を。 「……あれ、御坂さん?」 そんな、この世に絶望したような悲壮感を漂わせた美琴を背後から呼び止める声があった。 「……どうすればいいのかな……」 「…御坂さん?」 「……私、もう駄目なのかな……」 しかし、自分の迷いの中にいる美琴にはその声は届いていなかった。 「御坂さんっ!!」 だから、迷わず少女は声を張り上げた。 「えっ!?…え?何?……佐天さん?」 美琴は驚いて声のした方向に振り返る。そこにいたのは今の美琴とは正反対のように身体中から生きる活力を漲らせた黒髪の少女――佐天涙子がいた。 「ん?どうしたの佐天さん」 美琴は悟られぬよう表情を作り、普段と同じ笑顔を佐天に向ける。 「むっ」 しかし、佐天はそんな美琴の態度に納得いかないのか顔をしかめる。 佐天にとって美琴は憧れてやまない超能力者(レベル5)、だから無能力者(レベル0)の自分には判らない悩みがある事など重々承知だ。しかも、それこそ能力がらみの悩みなら自分にはどうしようもない事は良く分かっている。だとしても、そんな自分にも出来る事がある、ほんの僅かでも美琴の力になれる事がある、と佐天は考えている。だから、佐天は少々強引な手段をとる事にした。 「御坂さん、ついてきて下さい!」 「え!?佐天さん、何処に!?」 美琴の手を強引に取り、引っ張るように歩き出した。 ******** 「御坂さん、洗いざらい吐いてもらいますよ」 佐天が連れてきたのはどこにでもあるチェーン店のコーヒーショップ。常盤台の学生が来るようなお店ではないが、リーズナブルさで佐天達一般学生には縁のあるお店だ。 「洗いざらいって、私何も隠し事なんてしてないわよ」 美琴は佐天の前で笑顔を作ったまま崩そうとはしない。佐天もそれが判っているから追求を止めようとしなかった。 「そうですか。御坂さんがそうおっしゃるなら、そう信じたいところなんですが。あの時の質問をここでもう一度させて頂きますね」 「質問?」 「はい、質問です」 美琴には佐天が何を言おうとしているのかわからなかった。だけど、真剣なその瞳に視線をそらす事が出来なかった。 「御坂さん。いま、あなたの目には何が見えてますか?」 「っ!?」 その質問には覚えがあった。 乱雑開放(ポルターガイスト)事件 でテレスティーナ・木原・ライフラインに苦しめられ、自分一人で全てを解決しようと焦っていたときに言われた言葉だった。 「私が御坂さんの力になれるとか、役に立つとは決して言えません。でも、御坂さんが苦しんでいる事は私にだってわかるんです。もし、話すことで少しでもその苦しみを軽くする事が出来るなら、聞くだけしかできない私に話してもらえないですか?」 ああまただ――美琴は何度目の前の少女に思い知らされるのだろう。自分は一人じゃないと。 確かに、当麻の事は話し難い。でも、こんな真摯な瞳を向けてくる友達が信用できないほど自分は人を信じれないと思いたくなかった。 「黒子には秘密にしてね」 そう言って、美琴はその笑みを崩し、その眼に哀しみを湛えた、一人でいたときの表情が浮かびあがる。そして、ゆっくりとあの日の出来事を話し始めた。 「御坂さんは本当にその人の事が好きなんですね」 話を聞き終わった佐天は優しい微笑みを浮かべて美琴を見つめた。 「……うん」 恥ずかしげに、でもしっかりと美琴は頷く。親友に嘘はつきたくないから。 「ねえ御坂さん、誤魔化したのは本当はその人たちに遠慮したって訳じゃないんじゃないですか?」 「え?」 「これは私の予想、というか思いつきでしかないんですけど、御坂さん、その人が自分の事をどう思ってるか知るのが怖くなっちゃったんじゃないんですか?」 それは予想外な言葉だった。 「……私がアイツの事を知りたくない?」 何か自分の存在を否定されたかのような言葉だった。自分でも血の気が引くのが解る。 「ち、違います!」 そんな美琴の様子に慌てて佐天は否定の言葉を重ねる。 「御坂さんはその上条当麻さんのことを知りたいって思ってるのは確かなんですよ。でも、これは私にも思い当たる事ですけど、人を好きになった時、相手が自分の事をどう思ってるのか知りたいって思うと同時に、相手の気持ちが自分と異なっている可能性を考えてしまって、知りたくないとも思ってしまうんですよ」 「………」 「だから、その誤魔化した時の御坂さんの心情って恐らくその知りたくないって気持ちが強くなっちゃったんじゃないかと思うんですよ」 自分はなんて弱いんだろう。つくづく美琴は思い知らされる。 能力レベルは"自分だけの現実(パーソナルリアリティ)"の確立の差だと人は言う。だけど、そんなものでは自分の気持ちさえ判らないではないか。 「……で、でもアイツは何も言ってくれなかった。私に一言も言葉をかけてくれなかった」 そう、何よりも悲しかったのはその事。自分で誤魔化したこととはいえ、何か言ってほしかった。例えそれが美琴の我が儘だとしても。 「恐らく、上条さんも戸惑ったんだと思いますよ。何を言うべきなのか。だから、御坂さんは今度こそ上条さんに自分の気持ちをぶつけるべきだと思いますよ」 「で、でも!?」 美琴は焦る。そう、さっき佐天が言った通りだ。自分はアイツの気持ちを知るのを怖がっている。アイツがもし自分の事を何とも思ってなかったとしたら…… 「御坂さん、真実を知るのは怖いと思いますよ。でも、今のままでいいんですか?」 「そ、それは……」 「ほら、良いとは思ってないじゃないですか。だったら、もうアタックするしかないと思いますよ」 佐天は少し意地悪な表情を浮かべて、台詞を続けた。 「それとも、上条さんはそんな御坂さんの気持ちも考えずいい加減なことしかできないような男性なんですか?」 「そんなことない!アイツはそんな奴じゃない!どんな事だって真面目に正面から受け止めてくれる!!」 美琴は真っ赤な顔で反論する。そして、にやけた表情の佐天を見て"言わされた"事を認識した。 「……ふ、ふにゃぁ」 「うわぁ、御坂さん!止めて下さい!こんなところで漏電は駄目ですよ!!」 流石に幻想殺しの能力を持たない少女には美琴の漏電はどうしようもないのだが、それでも佐天の表情からは微笑みが消えなかった。憧れる「レベル5」の少女が素直に自分に相談してくれた事。それがとてつもなく嬉しかったから。 そして、心から溢れだす想いを止められない事は自覚した少女は決意する。 ――今度こそ私の想いを伝えてみせる! 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/恋する美琴の恋愛事情
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2839.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失 第1章 何かがおかしい。 髪型以外はどこにでもいる普通の高校生、ツンツン頭の上条当麻はそんなことを考えながら下校の途に付いていた。 いや、日常は何も変わりない。 出席日数が足りないので下校時間ぎりぎりの補習と山ほどの宿題が出されるのはいつものことだ。 登校途中に溝に足を突っ込んだり、空き缶を踏みつぶして転んだり、もまあ上条にとってはいつものことだ。 授業中、馬鹿話をして騒いで、小萌先生を泣かせたり、クラス中に敵意の視線をむけられたり、吹寄整理の鉄拳制裁を土御門元晴と青髪ピアス共々頂戴するのもいつものことだ。 出がけに謎の同居人、銀髪碧眼の白いシスター・インデックスがぶーぶー言ってそれをなだめるのもいつものことだ。 しかし、何かがおかしい。 確証はないが上条当麻は漠然とそんなことを考えていた。 自分の日常も、町の風景も、冬の始まりなので気温の低さも。 どこも何も変わらないのに、どこか上条は居心地の悪さを感じていた。 例えるなら、まったく知らない世界に一人、放り込まれた、そんな感じ。 まるで、自分の居場所を探すのに困る、という足が地に付いていない感に支配されていた。 「……んなわけねえじゃねえか」 ぽつりと呟く。 もっとも、本人は気付かなかったようだが苦笑にすらならない神妙な面持ちで。 もちろん、上条の思いはもっともだ。 自分の日常も、周りの交友関係も、すべてが普段どおりなのに、今の居心地に違和感を感じる上条の方がどうかしているのだ。 ぴたり。 上条は足を止める。 場所は第七学区にある、いい加減、取り変えるか直すかしようぜ、と言いたくなる自販機がある公園。 かつて、上条の二千円札と常盤台のエースの万札を呑み込んだ自販機をぼんやりと眺めながら。 ふと、上条は条件反射的に辺りをキョロキョロ見回した。 なぜなら、ここは描写されるたびに学園都市に七人しかいないレベル5の第3位であるビリビリ中学生と出くわす場所で、出くわしたが最後、碌な目にあったことない場所だからだ。 「……ふぅ……今日はいねえな……」 どこか、安堵のため息を吐く上条。 が。 「――――!!」 ハッとして顔を上げる。 (どういうことだ…………) 自販機を眺めながら上条は考えた。 ずっと感じていた違和感が。 常盤台のエースにしてレベル5の第3位、ビリビリ中学生こと御坂美琴のことを考えた途端。 ずっと感じていた違和感が、より一層強さを増したからだ。 「お帰りなさいなんだよ、とうま」 「おう、ただいま」 冬は日が落ちるのが早い。 既に藍色に彩られた町並みの一角に建つ、上条が住む学生寮に戻ってきて、自室の扉を開けた途端、一緒に住んでる同居人、インデックスが三毛猫のスフィンクスを抱きながら出迎えてくれた。 「今日も遅かったね」 「ああ、毎日毎日補習と宿題。悪いけど今日もお前の相手はあんまりできねえぞ」 「むー」 「そんな顔するな。だいたい、この補習と宿題をこなさないと俺はこの町に居られなくなるか留年だ。正直、それは嫌なんだよ」 それは上条の偽らざる本音だった。 元より、『幻想殺し』という異能の力であればそれを全て打ち消してしまう右手の所為で、外の世界では居場所がなく、この町に来てできた友達の方がはるかに多い上条は、一生、この町で暮らしたいとさえ考え始めている。 ところで、『幸運』は『異能の力』に分類されるらしいが『不幸』は『異能の力』とは違うのだろうか。 まあ、それはともかく。 「さてと、今日は……ん?」 上条の携帯が音を奏で始めた。 即座に取り出して、着信の相手を見てみれば、思いっきり、顔が引きつったのが自分でも分かった。 そこに記された文字は『月詠小萌先生』 『上条ちゃん、馬鹿だから補習でーす』 というラブコールが脳内再生されて。 「あれ?」 ふと上条は違和感を抱いた。昼間も感じていた猛烈な違和感が。 特に御坂美琴のことを思い出した時に一番強烈だった違和感が。 (変だな……何の変哲もない、昨日までも使っていた携帯と同じなのに何で……) もっとも、上条はその答えに到達することなく。 予想通りの、担任からの「上条ちゃん、出席日数も兼ねてお休みの日も補修でーす」との誘いに乗る以外の答えはなかった。 電話の内容をインデックスに告げたところ、頭を齧り付かれたのもいつもの日常だ。 本来であればその身を癒すことに充てられるであろう休日の土曜日。 しかし、上条は平日と同じような時間まで補習に明け暮れて、まったく癒されることはなかった。体だけじゃなくて頭の中も。 冬なだけに陽が暮れるのは早い。 夏にこの道を歩いた時は夕暮れだったな。 などと思いながら、桟橋風に敷き詰められた公園の高台を歩く。上空ではテレビ付きの巨大な飛空船に新たなレベル5が誕生した、とのニュースが流れていたが、上条はそれをぼんやり眺めるだけだった。 (新しいレベル5ねぇ……) 学園都市は能力開発の町。得た能力の強さにレベル付けされていて。 無能力者【レベル0】、 低能力者【レベル1】、 異能力者【レベル2】、 強能力者【レベル3】、 大能力者【レベル4】、 そして、さらにその上に君臨するのが二三〇万人いる学園都市でも7人しかいない超能力者【レベル5】である。 上条は何人かのレベル5を知っているわけなのだが、これがまたデタラメ常識外れ、規格外にもほどがある、というレベルではなく、もはや『怪物』の域に達しているような連中ばかりだったりするのだ。ある意味、性格も含めて。 そのレベル5が新たに誕生した、ということらしい。8人目のレベル5が。 が、その横に記された文字と顔写真に一気に上条は画面に釘付けになった。 (ぶっ! 白井!? 白井黒子!? って、あの白井かよ!? さすが常盤台は違うな……一つの学校に三人目のレベル5かよ……) 上条は思わず顔を引きつらせた。 というのも知っているレベル5の内の二人も常盤台なのだが、第3位の御坂美琴、第5位の食蜂操祈の二人に結構酷い目に合わせれているので、『常盤台のレベル5』には正直言って、良い印象が無い。というか、むしろ、本来であれば学園都市の女の子のほとんどが憧れて、男の子のほとんどがお知り合いになりたい、むしろ親密になりたいと考える、お嬢様学校の常盤台のはずなのに、上条にとっては関わり合いたくない学校の一番トップと言っても過言ではなかった。 (はぁ……あいつの厄介さに拍車がかかるだけじゃねえだろうな……) そして上条は肩を落として帰路に着く。頭の中を明日の補習に対するうんざり感とげんなり感に切り替えて。 上条はその晩、夢を見ていた。 内容は、あの8月21日の操車場。 一方通行を絶対能力者【レベル6】に引き上げるための実験に終止符を打つため。 絶望の淵から死へと身を投げ出そうとしていた御坂美琴を引き上げるため。 殺されるためだけに生み出された妹達の運命を変えるため。 上条当麻は、幾多の戦いの中で、唯一、科学サイドでの戦いだったあの日の夢を見ていた。 しかし、内容は違っていた。 現実は、上条自身が一方通行に向かっていったはずなのに。 柵越しに眺めていたのが御坂美琴だったのに。 夢の中では御坂美琴が一方通行に立ち向かい、上条当麻はそれを眺めているだけだった。 もっとも、夢の中の美琴は一方通行を押していた。 当時の一方通行に太刀打ちできる存在など、それこそ、上条の右手のように一方通行の『能力』を無効化できない限りそれはあり得ないはずなのに、美琴はベクトル操作の攻略法でも見つけたのか、一方通行を押していた。 もちろん、それは夢の中なのだから、上条の願望が美琴に勝たせたいと思っているかもしれないことは否定できない。 だから、夢の中の上条は美琴を眺めるだけだった。 やがて手負いの一方通行が、対上条戦のときのように。 追い詰められた者の究極のインスピレーションが大気を操りプラズマを生成する。 そして、その輝きが強さを増し。 上条がまばゆい光に目がくらんだ瞬間―――― 次に見えたのは風呂場兼上条専用寝室の、バスルームの天井だった。 「はぁ……今日も補習、明日は授業と補習、んで宿題、か…………」 上条当麻は月曜日の朝のラッシュに乗り込むサラリーマンのように肩をがっくり落として『帰宅の途』に付いていた。 「小萌先生の気持ちは本当にありがたいし、助かるんだけど、頭で納得するのと心で納得するのは違うもんなんだよなぁ…………」 とぼとぼと歩く上条はいつもの公園に入っていく。 いつも、御坂美琴と出くわすことが多い自販機のある公園に。 別に上条は美琴に会いたいとか、そんなつもりはさらさらない。というか、そんな考えは今この場の上条には微塵もない。 ただただ、喉の渇きを潤す水分補給のためである。 冬だろうと、一日中、暖房が利いた教室に居れば、当然、喉が渇く。帰り際に月詠小萌がムサシノ牛乳のパックを飲みながら運転していた姿を見たときに殺意すら芽生えるほどに。 自販機の前に立ち、後ろポケットから財布を取り出して、 カパッと開けてみれば、そこにあったのは『二千円札』のみ。しかも硬貨も無い。 上条は自分の顔が思いっきり引きつったが分かった。 「あー……あの夢は遠い意味で予知無だったのかなぁー…………」 などと呟きながら、天を仰いでみても別に財布の中身の『二千円札』は硬貨にも千円札にも両替されることはなかった。 「…………また呑まれるのかね……俺の不幸スキルを思うとあり得ない話じゃないよなぁ…………」 当然、決心はつかない。 過去と同じ過ちを繰り返すのは御免被りたい。 さりとて、喉の渇きは潤したい。 財布の中身と上空とを交互に眺めつつ逡巡する上条当麻は傍から見れば、相当間抜けに見えることだろう。 もっとも不幸中の幸いと言おうか。 既に夜が訪れている上に、冬の公園では上条以外に訪れている者はそうは、というか、まずいない。 いるとすれば、それは上条当麻と同じ理由に他ならない。 つまりは、 「ちょっとよろしいですの? 買われないのであれば、わたくしに自販機をお譲り願いたいのですが」 言って、上条の肩に手をポンと乗せた常盤台中学のコートに身を包んだツインテールの少女もまた、喉が渇いているということである。 「あ、ああ、すまん。先に買ってくれ」 「御配慮感謝いたします」 思わず順番を譲った上条に、ツインテールの少女は一礼してから、自販機に硬貨を滑らせる。 押したボタンは『ヤシの実ソーダ』だった。 冬なのに冷たいものを欲するとはなかなかチャレンジャーな少女である。 「って、白井じゃねえか!? どうしてお前、こんなところに!?」 「えっ!?」 相手を見とめて上条当麻が素っ頓狂な声をあげると、苗字を呼ばれたツインテールの少女=白井黒子もまた、予期せぬ出来事に言葉を失う。なぜなら白井は今この場で顔見知りに会うとは思ってもみなかったからだ。 普段であればその特徴的な髪型で気付いたかもしれないが、今日は、たまたま上条は毛糸の帽子を嵌めていた。 そうなれば、如何に上条当麻と言えど、姿形はどこにでもいる一介の高校生と何ら変わりはない。 だから、白井は、後ろ姿からでは上条に気付かなかったのだ。 同時に上条はハッとした。 白井黒子の姿がここにあるということは。 当然、白井が尊敬し、崇拝し、寵愛する御坂美琴もまた近くに居るということになる、と。 即座にキョロキョロ辺りを見渡す。とっても焦った表情で。 今は関わり合いたくない。絶対に面倒なことになること請け合いだからだ。しかも今の上条は心底疲れきっている。できるなら、どころか是が非でも御坂美琴とは邂逅を果たしたくはない。 「…………何をなさってますの?」 そんな上条の行動に我に返った白井は、どこかジト目で問いかけた。 「い、いや……お前がここにいるってことは近くに御坂がいるんじゃないか、って…………」 周りに視線を這わせながら。 白井を見ることなく、どこかあたふたしながら答える上条。 刹那、胸倉を掴まれた。 グイッと無理矢理、顔を正面にひねらされた。 相手は当然、白井黒子。 「し、白井…………?」 上条が、どこか戸惑って呼びかける。 しかし、対する白井黒子はいつの間にか、濃くした前髪の影に瞳を隠していた。 上条の胸倉を掴む手が、どこかわなわな震えていた。 「…………お姉さまを知っておいでですの…………?」 「え…………?」 白井の様子が尋常ではない。 と、同時に上条には白井の質問の意味が分からない。 白井は顔を上げた。どこか驚嘆と愕然が入り乱れた瞳で上条を睨みつけた。 「もう一度、お聞きいたします…………どうして、あなたがお姉さまを知っておいでですの…………?」 「ど、どうして…………って…………」 「確かにわたくしとあなたには面識がございますわ…………一度だけでございますけれども、九月一日の地下街テロ事件の際に、あなたにテロリスト逮捕を協力していただきましたから…………でも、そのときのあなたは別段、お姉さまのことを仰らなかったではありませんか…………なのにどうして今になって…………お姉さまのことを口にしましたの…………?」 「は? ちょっと待て白井。俺とお前の顔合わせはそれ一回だって? んなわけねえだろ」 「…………どういう意味ですの?」 「だって、俺とお前が初めて会ったのは、御坂と俺がそこのベンチに腰かけていた時だったじゃねえか。その次の日の夜にお前らの部屋を訪ねたし、あと他にも、倒壊寸前のビルからお前を助け出したし、大覇星祭で車椅子に乗っていたお前を見ているし、御坂と携帯の契約した現場でお前に後頭部を思いっきり蹴とばされたことも――――」 「…………あなたはいったい何を仰っておられますの? 今、あなたが語られた邂逅にわたくしは何一つ覚えがありませんわよ」 上条を見る白井の瞳は、先ほどの切羽詰まって睨みつけてきたものから、不審者をみる猜疑心に満ちたものに変わっていた。 が、上条からすれば、白井のその視線の方が気に入らなかった。 「はぁ!? 何言ってやがる! これまで、お前ら二人には散々な目に合わされたんだぞ俺は! 都合よく忘れてんじゃねえよ!!」 「…………『お前ら二人』? それこそ意味が分かりませんの。わたくしはともかくお姉さまとあなたに面識があったとは思えないのですが?」 「て、てめえ……あの日の夜にお前が俺に言ったこと忘れたのか……?」 「どの夜のことですの? わたくしにはまったく身に覚えがございませんわ」 上条の剣幕詰めよりもものともせず、白井は腕組みをしてつーんとそっぽを向き、にべもなく言い返す。 「こ、この野郎…………人のことを『あの馬鹿さん』と評したり、御坂が事あるごとに俺のことを悪く言っていたとか散々言ったくせに…………」 「何ですって――――!!」 衝撃が走る白井黒子。 「どうだ? 思い出したか?」 「違いますわ…………いえ、そうではなく…………」 「なんだよ?」 「もしかして…………あなたがお姉さまがよく仰っておられた殿方ですの…………?」 先ほどまでとは急転直下。 白井黒子の声は震えていた。 まるで、待ち焦がれていた相手に会えた驚き。 しかし、その感情は歓喜ではなく衝撃。 「ふっ、どうやら思い出したようだな。あの日、8月21日の夜のことを」 得意げに語る上条は気付かない。 もっとも、すぐに気付かされる。 「どうして……………」 白井の声が嗚咽を含んでいた。 「お、おい…………?」 上条が戸惑いの声を漏らすと白井は上条の胸の中に、そっと倒れ込むように寄りかかった。 「――――どうして、今頃になって姿をお見せになりましたの!? どうして、あのとき、お姉さまの支えになってくれませんでしたの!?」 白井が声を上げた。 慟哭と言っても過言ではなかった。 今の今まで溜め込んでいた、抑え込んでいた嘆き、悲しみ、喪失の感情を上条が決壊させ、爆発させたのだ。 「待てよ! 俺にはお前の言ってることの方が意味が分からねえんだよ!」 上条が叫び返すと、白井は上条の胸の中で一瞬ビクッと震え、動きを止める。 「…………この期に及んで、まだそんなことを仰られますの…………?」 見上げてくる白井の瞳は涙目で。 しかし、上条を仇敵を見つめるような瞳で。 「どういうことだ?」 そんな白井の視線に迎撃されて、しかし、上条は神妙に親身に問いかけた。 対する白井黒子の答えは―――― 「…………お姉さまは…………御坂美琴お姉さまは…………あなたの仰った8月21日の夜に殺されてしまったのですわ…………」 聞いた瞬間、上条当麻は、自分自身を背景ごと協調反転させたような衝撃に支配され、確かに一瞬、時間が止まったのだった。 そして思い出した。 昨夜、月詠小萌からの連絡時に、その手にあった携帯電話に違和感を抱いたその理由。 九月に美琴とペア契約した際に特典として付いてきた、 ゲコ太のストラップが、紐が切れてどこかに落としたとかではなく、存在そのものが最初から無かったかのごとく消失していたことを。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1616.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/恋する美琴の恋愛事情 修羅場美琴の告白事情 「不幸だ……」 いつものようにお決まりの台詞を呟きながら、上条当麻は己が立場を呪うしかなかった。 「トウマ、トウマ。色んなオカズが沢山あるんだよ!これほど豪華なお弁当は初めてなんだよ!!」 隣に座るインデックスはそんな当麻の心情に気付くことなく目の前のお弁当に心奪われはしゃいでいる。 そう、目の前には和洋中幾種もの色とりどりのオカズが入ったお弁当が拡げられていた。 「日本人なら和の心。誰かの為にお弁当を作ったのは初めて。上条君、食べてくれる?」 「医食同源。中華には食事にも健康に気を配るという非常にありがたい心構えがある。上条当麻、心して食べるように」 「べ、別にアンタの為に作ったわけじゃないけど、せっかく作ったのに食べないともったいないでしょ。アンタもボーっとしてないで食べなさいよ」 そして、上条当麻の目の前にはまるで『私の弁当を食べないとわかってるわよね?』とでも言いたげな視線で睨みつけてくる3人の美少女がいた。 一人一人がそれぞれの美しさを持つ美少女であり、それぞれが確固たる意志を持った瞳で当麻を睨みつける。 「おかしい」と、当麻は首を傾げるしかなかった。昨日まで3人が3人とも嬉しそうにしていたはずだ。それなのに、どうして自分はまるで釜茹でされる直前の石川五右衛門のような気持ちにならなければいけないのか、当麻には全くもって理解不能だった。 「どうしてこうなった……」 白洲に座る罪人の如くその身体を委縮させながら、当麻はここに至る過程を思い出していた。 ******** 「……遊園地?」 御坂美琴は上条当麻の台詞に意外そうな表情で聞き直した。 「そ、今度新しく出来た室内型遊園設備への招待状ですよ」 そう言って自慢気に2枚のチケットを見せつける。確かにチケットには今度新しく開園する室内型遊園地の招待券と書いてあった。 いつものように学校の帰りに本来の通学路からは遠回りして、いつもの公園で上条当麻と会っていた美琴だったが、「そういえば」と当麻が取りだしてきたのがこのチケットだった。 「で、それを誰と行くのよ?」 自慢気に見せつけるそれを見ながらなんとなく不機嫌になる美琴。2枚のチケットのうち1枚は当麻が使用するとしてもう一枚の行方が気になる。まあどうせあのちびっこシスターなんだろうと予想が付いてしまうだけにどす黒い感情が表面化しそうになってしまう。 「ん、そんなの御坂に決まってるだろ」 しかし、予想外の台詞に美琴の心拍数が跳ね上がる。 「いやあ、小萌先生からこのチケットを貰った時はどうしようかと思いましたが、普段お世話になっている人へのお返しをしなさいと言われて、やっぱ御坂にも渡さないとなと思ったわけですよ」 「へ、へえ……」 なにか重要な事を言ったような気がしたが、すでに美琴の心拍数は跳ね上がり、血圧は上昇、まともな思考は働いていない。 「御坂を誘うなら白井とかも誘うべきなんだろうが、枚数的に御坂一人になっちまうのは申し訳なかったけどな」 「う、ううん!大丈夫よ!黒子の事なら問題ないから!!あの子はうん。全然まったく関係ないから!!」 もし白井黒子が聞いていたらショックのあまり卒倒するような台詞を吐くあたり美琴のテンパリ具合が尋常ではないのが見て取れる。当麻は当麻でいつもの如く超鈍感ぶりを発揮し、美琴が喜んでくれていると思い込み話を続ける。(まあ、実際、大喜びはしているのだが) 「それなら良いんだけどな。そういうわけで、次の日曜に行くからあけておいてくれよ」 「う、うん!絶対にあけるから!!予定なんか入れない!!」 折角の初デートなのだから、例え予定があってもキャンセルする。完全に美琴の心は舞い上がっていた。 「ふう、これで上条さんも一安心ですよ。皆楽しんでくれれば本当にチケットを配った甲斐があるというものですよ」 と、これまた意味深な発言を繰り返すのだが、やはり舞い上がった美琴の心はもう何も聞いていなかった。 そして、寮に帰っても喜びを隠せない美琴は黒子の前で当麻とのデート予定を激白(もちろん黒子用のチケットなどなく、二人っきりのデートである事も全て)。黒子がその場で真っ白に燃え尽きていたが、それさえも気にならない程に美琴は舞い上がりっぱなしだった。 「ふふん~♪何を着て行こうかな~」 などと制服着用義務さえ忘れている美琴の姿を見て、燃え尽きた黒子の灰はさらに風に吹き飛ばされていくのであった。可哀想に…… しかし、当日になって浮かれた美琴の心は急転直下し、地獄の底へと叩きつけられる事になる。何故なら…… 「トウマ、秋沙は判るとしても、なんで短髪がここにいるのかな?それにまた別の女性も……」 「上条君、どういうことなの?」 「上条当麻、どういうことか説明してもらえるか?」 待ち合わせした遊園地の入り口前で美琴が見たのは、上条当麻の姿だけでなく、白い修道服を着た少女、前に公園で見掛けた日本人形のような黒髪の少女、さらに大覇星祭で当麻の前で倒れた巨乳の少女達の姿だった。 「え?いや、だから、普段からお世話になっている人たちへの感謝の気持ちだって言ったじゃないですか」 自分のやった事の重大さが全く理解できていない当麻はあっさりとそう答えたが、その瞬間、吹寄のヘッドバッドが当麻の脳天へと、姫神のアッパーがみぞおちへと突き刺さり、とどめに美琴の電撃が全身に落ちる。 「な、なんで……不幸だ……」 パタリと崩れ落ちる当麻。もちろん、いつもの口癖は忘れなかった。 「自業自得なんだよ、トウマ。そして、まだ私の罰が残っている事を忘れないでよね」 そして、その言葉通り、数秒後意識を取り戻した上条はインデックスに頭から噛みつかれることとなった。まさに自業自得…… ******** 「ところでその制服、常盤台中学のものよね?なんで貴方みたいなお嬢様学校の子があんなバカと知り合いなの?」 前を歩く巨乳の少女が美琴に話しかけてきた。 『確か、吹寄制理さんだったっけ?』 見た目からかなり気の強そうな顔をし、当麻が好みそうなほど巨大な胸をした少女を見ながら、それはズルイな……などと美琴は心の中で溜息をつく。 結局、あれから解散するわけにもいかず、お互い自己紹介の後、5人で遊園地に入ったものの、気まずい空気は払拭されず沈黙がその場を支配していた。しかし、もともと吹寄制理と姫神秋沙の二人は同級生、しかも友達同士という事もあり、すぐに二人は会話を始めるのだが、どうしても年下であり、学校すら違う美琴にとってとても居づらいものであった。 「大丈夫よ。別に貴方が悪いわけではないから。どちらかと言えば乙女心を理解せずにこういう事をするあのバカに責任があるんだから、気にしないで」 「は、はあ……」 とはいえ、気易く当麻の事を「あのバカ」と呼んでいることが美琴にはなんとなく気に入らなかったりもする。 「彼は私と私の妹の命を救ってくれた命の恩人だから。全身全霊を賭けて私たちを守ってくれた人だから」 と、特別な関係である事を示すような言い方をしてしまう。 「ふうん」 しかし、吹寄はさほど気にする様子もない。まるで「そんなことは判っている」とでも言っているように美琴には感じてしまう。 「やっぱ、あのバカ無茶やってたのか」と悔しがるような呟きが吹寄の口から聞こえた。 「確か、御坂美琴さんよね」 今度はもう一人の黒髪の少女から話しかけられる。 「え、ええ」 一応返事はしたが、その少女-姫神秋沙は何かを考えるかのようにしばらく無言が続く。そして、数秒の後、彼女の口からは核心をつく台詞が美琴に向けて放たれる。 「上条君は目の前に苦しんでいる人がいたら助けずにはいられない人。私だってその一人。だから、それが特別にならない事は知っている」 そう、上条当麻と言う人間はそういう人間だ。それは美琴も理解している。 だからと言って、それを認めてしまえば、自分の存在さえも消えてしまうような不安感を感じてしまうのも事実だ。だから、いままで見て見ぬふりをしてきたのだ。彼の傍にいるインデックスという少女も同じく救われた側であろうという事実ですらも。 「まあ待て姫神。彼女はまだ中学生だ。自分の感情に戸惑いを覚えても仕方のない年齢だ。そう責めるものではない」 恐らく吹寄も悪気があったわけではない。そんなことは美琴も理解している。しかし、美琴にはどうにも我慢できなかった。当麻が高校生で自分が中学生であるという現実。この年の差のせいで美琴が当麻にまともに相手してもらえてないことを理解しているから、第三者にその現実を突きつけられた事に無性に腹が立った。 「そんな事!わかってるわよ!!でも、自分の気持ちに嘘なんかない!!私は本当に!!」 しかし、美琴はそこで言葉を止めてしまう。ここから先はこの場で言うべきではないのだと、判ってるから。 そして、それは他の二人にも理解できてしまったのだろう。最初に謝ってきたのは吹寄だった。 「すまない。その事を責めたつもりではなかったのだ。君に不快な思いをさせたのであったならば謝ろう。申し訳なかった」 そして、姫神もそれに続く。 「ごめんなさい。私も焦ってしまって、貴方を傷つけてしまった。本当にごめんなさい」 そんな二人の態度に美琴は自分を恥じることになってしまう。これが中学生の自分との違い。学園都市最強の7人のレベル5の第3位と言われても、結局自分は単なる子供なんだと痛感させられてしまう。 「おいおい、何があった?」 そして、このタイミングで当麻が割り込んでくる。 「吹寄、姫神、何があったんだ?御坂もなんでそんな表情してるんだ?」 そう、こいつはこういう奴だ。普段は全く自分たちの事を気にも留めないのに、苦しんだり、悲しんだりすると直ぐに来てくれる。それが有難くもあり、辛くもあった。 「上条、申し訳ないが、そこのシスターとちょっと先に行ってお弁当を食べれるような場所を確保しててくれないか。私達はちょっと話し合う必要があるようなのでな」 「ゴメン、上条君。私も吹寄さんと同じ。先に行っててくれないかな。すぐに追いつくから」 二人の真剣な表情に当麻は困ったような顔をしたが、「御坂もそれでいいのか?」と尋ね、頷くのを確認すると「わかった」と言って、その場を離れて行った。 インデックスだけは「なんで私を入れてくれないかは聞かないけど、シスターは迷える子羊には優しいんだよ」と、わかったようなわからないような言葉を残して去って行った。 「さて、では少しばかり本音で話をしようか」 吹寄のその台詞に美琴は力強く頷いた。 ******** そして、20分後、3人はお互いにすっきりした表情で当麻達のもとにやってきた。 心配していたようなことにはなっておらず一安心した当麻だったが、しかし、お弁当を広げた瞬間今度は当麻が困ることになった。 「ええと、どれから食べればいいでしょうか。上条さんは非常に迷います」 と、嫌な汗を大量に掻きながら、当麻は箸を持ったまま固まってしまう。 美琴の作った洋食も、姫神の作った和食も、吹寄の作った中華も、どれもが非常に美味しそうでどれから食べようか迷ってしまうのも事実なのだが、それ以上に”誰の”お弁当から手をつけるのか、それが問題になってしまっていた。 「上条当麻。まさか私の作ったものが食べられないというのではないだろうな?」 と吹寄が氷の瞳で睨みつけているかと思えば、 「上条君は和食が似合うと思う。是非食べるべき」 と姫神が真剣な瞳で見つめてくるし、 「ど、どれから食べても構わないけど、折角私が作ったんだから、ちゃんと食べなさいよ」 と真っ赤な顔で上目遣いに睨んでくる。 『3人とももしかして上条さんを苛める相談でもしてたんでしょうか?なんでこんなに心臓に悪いんでしょう?』 当麻はまるで蛇に睨まれた蛙の如く動けずにいた。 「トウマは、やっぱりトウマなんだよ。というか、トウマが食べないんだったら私が全部食べちゃって良いのかな」 などと相変わらず食欲魔人の如くな台詞を口にする。KYって言葉知ってますか? 「ええい!悩んでいても仕方ない!ここはこうすればいいんだ!!」 もう形振り構っていられないと判断し、完全に吹っ切れた当麻はあろうことかそれぞれの弁当から一品ずつを抜き取り一度に口の中に放り込んだ。 「バカなのか上条当麻!そんな事をすれば味も何も分からなくなるだろ!!」 「やりやがった、この野郎」 「あ、アンタってば本気でバカなの!?」 と、三者三様の反応を示すが、「美味い!美味いぞ、これ!!今まで食べた事の無い美味さだ!!」と当麻が涙を流して喜ぶと、3人とも顔を真っ赤にして、 「あ、当たり前だ。そのために作ったのだから」 「喜んでもらえたなら、嬉しい」 「ば、バカ。そんなに大喜びすんな」 恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうな顔をする。 逆にそれに対し機嫌が悪くなったのが一人。インデックスである。 インデックスは自分で調理などしないから同じ土俵には立てないが、蚊帳の外にいる現状に納得がいかなかった。だから、インデックスが取る手は一つしかなかった。 「トウマばっかりずるいんだよ!私も食べるんだよ!!」 と、当麻の先手を取りお弁当を食べつくす蹂躙作戦に打って出たのだった。 そして、自分たちの食べる分が無くなる事に慌てた、美琴、吹寄、姫神もお弁当争奪戦に参加。こうして賑やかな昼食は瞬く間に過ぎて行った。 ******** 「ねぇ、楽しかった?」 夕陽の差しこむゴンドラの中で、美琴は目の前に座る当麻に楽しそうに話しかける。 「そうだな。たまにはこういうのも悪くないよな」 当麻はそんな美琴を見て、やはり嬉しそうに答えた。 昼食の後、それぞれの希望するアトラクションを巡る事になり、吹寄の希望するジェットコースター、姫神の希望するお化け屋敷、インデックスの希望する屋台めぐりをそれぞれの希望者と当麻のツーショットで回る事になった。そして、最後が美琴の希望した観覧者だった。 これも希望者と当麻のツーショットで乗る事になり、今ゴンドラの中は美琴と当麻の二人しかいない。残りの3人は気を利かせて別のゴンドラに乗っている。 「なあ、3人で何を話してたんだ?」 当麻は気になっていた事を美琴に尋ねた。 実は他の二人にも同じことを尋ねようと思ったのだが、何故か口にする事が出来なかった。だから、美琴に聞くことにしたのだが、何故美琴には聞く事が出来たのか、当麻自身気が付いていない。 「大したことじゃないよ。ただ、自分たちの気持ちに向き合えてるかどうかの確認」 そう言って、それ以上の事は話そうとはしなかった。 そして、沈黙に支配されたゴンドラが丁度頂上に差し掛かった時、再び美琴は口を開く。 「ねえ」 ゴンドラに差し込む夕日が背後から美琴を光輝かせる。 それはまるで妖精のような美しさだと当麻は素直に感じる事が出来た。 「私がアンタの事好きだって言ったら信じる?」 そして、その言葉は魔法のように二人だけの時間を示す時計を止めることになった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/恋する美琴の恋愛事情
https://w.atwiki.jp/jisakunobatorowa/pages/117.html
【名前】御坂美琴 【出展】とある魔術の禁書目録 【性別】女性 【外見】見目麗しく、化粧がいらない程度に整った綺麗な顔立ちで、肩まで届く短めの茶髪 【服装】常盤台中学の制服 スカートの下にはクリーム色の短パン 【性格】竹を割ったようなサッパリとした勝気で活発な性格。 非常に正義感が強く、また真面目な努力家でもある。 頭より先に体が動く点や自分の損得に関係なく人助けに動く点、周りを巻き込まず自分一人で事件を解決しようとする点など、 性格的な面は上条当麻と酷似している。 【声優】佐藤利奈 【能力】発電系能力者の頂点に立つ最強の電撃使い(エレクトロマスター)であり、 電気系能力の象徴として、必殺技でもある『超電磁砲(レールガン)』を自ら異名として名乗っている。 自身の能力を応用し、物理的なレールを使用することなく、コインを弾丸として音速の3倍の速さで毎分8発程度の連射速度で 発射することが出来る。コインが空気抵抗で燃え尽きてしまうため射程は50メートルだが、自動車を空中に吹っ飛ばす威力を持っている。 生させた電撃を槍状にして射出する「電撃の槍」は、最大10億ボルトの電圧を誇る。 能力で発磁力を操作して砂鉄の剣を構成したり、転がっていた鉄屑で即席の盾を形成したり、磁力圏内で自分自身の空中浮遊も可能。 携帯電話から機密性の高いデータベースに侵入する等のハッキング・クラッキングも行える。 また、弱点も存在し、美琴が一定の能力を使い続けるとほとんど能力が使用できなくなる場合がある。本人は「電池切れ」と呼んでいる。 【一人称、特徴的な口調など】一人称は「私」 「本っ当退屈しないわね、この街は」等。 【解説】 常盤台中学に通う、七人しかいない超能力者(レベル5)の第三位。 レベル1から努力のみでレベル5になった稀有な例として知られており、その功績は教育指導の模範とされている。 勉学においても優秀で、高校生である上条の宿題をいとも容易く解いてしまう程である。 更には、英数字で構成された18ケタの符号を一度聞いただけで暗記してしまう等、 元来の頭脳も凄まじいものである様子を窺わせる。 言語方面も優れており、フレンダが攪乱を目的としたオリジナル言語を話した際には英語でもフランス語でも無いことを看破している。 また、ロシアに行った際にはロシア語オンリーの看板や標識表示を見ても、 わざわざ日本語表示に変える必要性を感じないほど。 寂しがり屋なところがあり、カエルのマスコット「ゲコ太」や小動物といった可愛らしいものを好むが、 動物達は彼女が常に放っている微弱な電磁波を恐れて寄ってこないという悩みも持つ。 「上条当麻の名前を口に出さない」という特徴がある。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/642.html
パラドックスの確率 2 午後八時。 上条と美琴(仮)はとある河原に立っていた。「言われた通り呼び出したけどよ、お前がアイツと会ったらまずいんじゃねえの?」「さっきは確かにそうだったんだけど、今なら大丈夫。もうすぐ私は消えるから」「……消えるとか、嫌な言い方すんなよ」 美琴(仮)の言葉に上条が眉をしかめると「仕方ないもん。この時代にとって、私はいちゃいけない人間なんだからさ」 美琴(仮)は苦く笑う。 上条に話しかけられている間、美琴(仮)はずっと空を見上げていた。こうやって空気中の『情報』を読み取って、帰るための時が来るのを待つ。 ここへ来るまでに何度も美琴(仮)は何度も演算を繰り返した。 方程式の値を入れ替え、検証し、確信を持って元いた時代へ帰るための準備は整った。 あとはあの子が現れるのを待つだけ。「……来たわね」 美琴(仮)は自分と同種の電磁波を感じ取り、土手の方を振り向くと「……お待たせ。アンタに言われた通り来たけどさ。何? アンタはこの女といるところを私に見せつけたいの? それとも何か目的でもあんの?」 常盤台中学の制服を着た、御坂美琴が現れた。 美琴(仮)の一〇年前の姿で、 頭から湯気が噴き出しそうなくらいに怒った顔で、 全身から断続的に火花を散らして。 美琴(仮)は笑いを堪えながら「来てくれてありがとう、御坂美琴さん。早速で悪いんだけど、あなたとちょっと話がしたいのよ。……当麻、少し席を外してくれる?」「……大丈夫か?」 上条が不安そうな眼差しを美琴(仮)に向けると「大丈夫よ。この子は私だもん。扱い方くらい分かってるわ」「……あのさ、私を除け者にして勝手に話を進めないでくれるかし……らっ!」 美琴の額から美琴(仮)に向かって、挨拶代わりに雷撃の槍が飛ぶ。「……おっとっと。相変わらず気が短いのね」 美琴(仮)が笑って槍を受け止める。 雷撃の槍は美琴(仮)の腕を通り抜け、わずかな間に霧散した。「おいビリビリ! いきなり雷撃の槍なんか飛ばすなよ! 危ねえだろ!?」 美琴は腰に手を当てると、ニヤリと笑って「……この女が電撃使いってのは分かってんのよ。威力を押さえた雷撃の槍程度じゃ通用しない……そうでしょ?」「ご名答。さすが学園都市の第三位。……当麻はちょっと離れてて。このじゃじゃ馬は少しばかり危ないから」 美琴(仮)は同じ笑顔を美琴に返す。「じゃ……ッ、じゃじゃ馬!? ちょっとアンタ! 人をつかまえて良くも……」「……ヤバくなったら呼べよ?」「当麻ったらやっさしーい。それでこそマイダーリンよね」「なっ!? 変な事言うなよ! 俺向こう行ってるからな」 上条は一度振り向き、美琴(仮)に向かって『冗談は止めてくれよ』と言うと、美琴達から離れた土手まで走って振り返る。そこで二人の会話が終わるのを待つつもりらしい。 美琴(仮)は上条に向かって手を振ると、美琴に向き直り「……さて。何から話そうかな。話してもあなたはたぶん全部忘れちゃうんだけどね。何しろ私も今の今まで『忘れてた』から」「は? アンタなに訳の分かんない事言ってんの? それより、アンタも電撃使いってんなら私と勝負しなさい。アンタに勝ってから、アンタのご託を聞いたげる」「はいはいストップストップ。決着の時間ならあとで作ってあげるから、今は私の話を聞いてくれる?」 美琴はいらだたしげに革靴の爪先でトントンと地面を叩いて「……アンタの話ってのは何? アンタがあの馬鹿の事を馴れ馴れしく名前で呼び捨ててる事? それともダーリンとか呼んでアンタ達がいちゃついてる事?」「……今にして実物と対面すると、ホント昔の私って気が短かったのね。これじゃ当麻が嫌がる訳だ、うん」「アンタ一人で何納得してんのよ? さっさと話ってのを始めたら? 私忙しいんだからさ。あの馬鹿がどうしても来てくれって言うからここに来ただけなんだし」「いやー、過去の自分のツンデレっぷりに頭が痛くなってきたわね。……じゃ、本題に移りましょ。あなた、時間移動能力者って知ってる?」「……知ってるわよ。まだこの学園都市でも現れていない幻の存在よね。科学者達は念動力の発展系って考えてるらしいけど」「そう。今も科学者は必死に研究してるだろうけれど、実は一〇年経っても時間移動能力者はまだ現れないのよ。それで、私は別のアプローチで時間移動の研究を始めたの。科学の力で、時間を操ろうとした訳。私が持つ能力を、移動のための動力として使う事でね。私はアンタと同じように空気中の電子線や磁力線を読み取る事ができる。もし、その応用で『時間の波長』を読み取って演算できるとしたら?」「……できる訳ないでしょ、そんな事。アンタは夢見がちなおばちゃんだったのか」 おばちゃん呼ばわりされても、美琴(仮)はひるまない。 それどころか余裕の笑みを浮かべて「ところができちゃうんだな、これが。さらに言えばあなたは学園都市第三位にして最高の電撃使い。最高出力は一〇億ボルト。これだけ瞬間的に出せれば、小型発電所並に電力を供給できる。……違う?」「そりゃ私は学園都市の第三位……あれ? 何でアンタの話なのに、私の話が出てくんのよ?」「あなたは私。私はあなた。私はね、一〇年後のあなたなのよ。……初めまして、『私』」 そこで美琴(仮)は美琴に向かって優雅に一礼する。 今ここで美琴としゃべっている内容は、美琴自身がすぐに忘れてしまう。だから好きなだけしゃべる事ができる。 何しろ、上条美琴自身も忘れていたのだから。「今から九年後の学園都市で、私……つまり九年後のアンタは時間移動の研究に着手する。時間移動に使用する試作機のエネルギーは自分の能力でまかなって、研究に研究を重ねて一年、ようやく時間移動実験の第一回目を迎えたの。結構これが大変でさ、それでも初期の予定では『三〇分後の過去』へ飛ぶのが限界のはずだった。ところがどうも計算式に抜けがあったみたいでね、一〇年前の今日へ飛んじゃった、と言う訳。時間移動そのものは成功。けれど、とんだ大失敗……だったんだけど」 美琴(仮)はかつての美琴のようなしゃべり方に戻して、話を続ける。 上条は離れたところに立っていて、二人の会話は彼の耳には入らない。「予定していた時間への跳躍は失敗し、私は過去へやってきた。ここに来てからだいぶ時間は経ってるけれど、能力の回復はいまだ全快にはほど遠い。そこで私は『気がついた』。この時間跳躍は偶然じゃない。必然だったんだって」「……意味が分かんないわね」 美琴は横に首を振る。「アンタは私。だから分かんないふりをすんのは止めた方が良いわよ? 私はね、過去の私、つまりアンタに会うためにここに来たのよ。誰が仕組んだかは知らないけどね」「はぁ? 何のためによ」 美琴は未来の自分と向かい合うと、自分にどことなく似た女性をキッと睨み付ける。「アンタさ……好きな人いるでしょ? その人の名前は上条当麻」 美琴(仮)が美琴に指摘すると、美琴は顔を真っ赤にして「……べっ、べっ、別に、あの馬鹿の事なんてこれっぽっちも好きじゃないわよ。本当よ?」 目に見えて狼狽する。「あのさ、私が私に向かってごまかしてどうすんのよ。アンタが今ここでちんたらやってっと、未来の私に影響が出る訳。だからさっさとくっついてくれる? 私と当麻が幸せに暮らすためにもね」「……私と、……当麻?」「そう。私は一〇年後のアンタなんだけど、一〇年後のアンタは上条当麻と結婚して上条美琴になってんのよ。で、アンタはこれからアイツに告白すんの。今日、この河原でね」「……馬鹿馬鹿しい。与太話はここまでね」 美琴が唇をギリ、と噛みしめる。 直後、茶色の前髪が静電気を帯びてふわふわと浮かび始めた。 美琴(仮)ではなくなった上条美琴は両手をわたわたと振って「いやいやホントだから。ちょっと落ち着いてくんない? 毎日ムサシノ牛乳一リットル飲んでたってカルシウム全然足りてないんじゃないのアンタ?」「ちょ、ちょっと! どうしてアンタがその話を知ってんのよ? 黒子だって知らないわよ?」 美琴は放電を止めると、上条美琴に詰め寄る。「だから、アンタは私なの。同じ事知ってて当然じゃない。牛乳飲んでる理由も知ってるわよ。……もうちょっと大人っぽいボディになりたい、というより胸が小さいのを気にしてるからよね? でもね、毎日牛乳飲んでもダメだから。アイツに協力してもらった方が早いわよ?」「……あ、アイツって?」「あそこにいるツンツン頭だけど?」 上条美琴は、土手でぼけーっとしている上条を指差す。「ばっ、ばっ……ばはば、馬鹿じゃないのアンタ? 何をどう協力してもらうのか知んないけどさ、そんなんで大きくなる訳……」「都市伝説とか眉唾もんとか良く言われるけどさ、んー、愛の力って奴? 経験者がここにいんだからちったあ信じなさいよ」 上条美琴は『ほらこんな風に』と親指で自分の胸を指し、美琴がそれを食い入るように見つめる。「……大体私の話はこんなところかな。で、何か質問とか感想とかってある?」「……本当に牛乳飲んでもダメなの?」「質問ってそっちか。……私らしいと言えばらしいけど」 上条美琴は苦笑すると「うん、ダメダメ。牛乳の習慣は固法先輩を見習って始めた事だけど、先輩が大きくなったのは違う理由だと思うわよ? つか、固法先輩がムサシノ牛乳で大きくなったって言う確証がそもそもどこにもないじゃない」「…………そうだったんだ…………」「い、いやあのね、そんな涙目になって落ちこまなくて良いんじゃない? アンタはこれからなんだからさ。元気出しなさいよ、ねっ?」 美琴は上条美琴の励ましに、ううと唇を震わせつつ上空を指差して「それから、このヘンテコな静電気の発信源はアンタよね? 何でこんな事になってんの?」 上条美琴もつられるように空を見る。 二人の超能力者は、空中に飛び交う電磁波や静電気を能力で読み取ると「推測だけどね……たぶん私が本来ここにいてはいけない人間だからだと思う。私の存在はこの世界の摂理って奴に反してるから、世界そのものによって排除されかかってんのよ。だから私の体に帯びてる電磁波も静電気も、この世界から『弾かれて』異物として引っかかってんのよ。今こうしてアンタと話している内容も情報という名の『異物』だから、私がこの世界を離れたら、世界の摂理によっておそらく一斉に消去されるわね。例外は当麻の右手……あの右手はいろんなものを跳ね返しちゃうから、当麻に話した内容だけは残っちゃうけど、当麻が人に話してもたぶん誰も信じてくれないと思うわ」 確証のない、推論ばかりの話。 実験データを積み重ねなければ裏付けさえ取れない話。 それでも、一〇年前の自分に聞かせておきたかった。 上条美琴が一〇年前に御坂美琴だった頃、ひょっこりやってきた『上条美琴』に聞かされた話を。「この世界が私を排除しようとする力を逆手に取って、私は元いた時代へ帰る。手順としてはこうね。まず、私をここから排除しようとする力が、私を『外』へ放り出すために世界に穴を開ける。次に、開いた穴から時間の波を読み取って、元いた時代に向かって『時間のレール』を電撃で作る。最後に、当麻の右手の力を使って、この世界と『私』の接続を断ち切ってもらう。こうすれば、ゴム紐に引っ張られるみたいに、私は世界の『排除する力』を振り切って、元の時代へ帰れるって寸法ね。……一か八かだけど」「……本当にそんなんで帰れんの? そんな都合のいい話ってあんの? それって失敗するかも……」「帰るわよ、絶対に。向こうじゃ私の旦那が今頃首を長くして待ってんだから」 上条美琴は揺るぎない自信を微笑みに乗せる。「ねぇ、最後に聞かせて。……一〇年後のアイツって、どんな感じ?」「……優しいわよ。優しすぎてフラグ体質に拍車がかかってっけどね」 上条美琴は美琴の肩をポンポンと叩いて「……そろそろ時間だわ。最後に、私が元の時間に帰るためにアンタに協力してもらいたいんだけど、いい?」「……いいけど、何やればいいの?」「アンタの全力を私に叩き込んで。それだけでいいから。アンタの電気をもらって、それで私がレールをかける」「ちょ、ちょっと! いくらお互い電撃使いと言ったって……それに教えてくれれば私がレールをかける方法だって……」 美琴がうろたえながら『本当にそれで良いの?』と上条美琴に問いかける。「今のアンタじゃ無理なのよ。より強固な自分だけの現実と高度な演算が必要になるから。……大丈夫、私を信じなさい。きっと最後はうまく行くわよ」「……やけに自信たっぷりな自分って何かムカつくわね」「私はツンデレだった過去の自分を穴掘って埋めたいくらいよ。それじゃ、そろそろ当麻を呼ぶから、アンタは私が合図をしたら全力でよろしく」 そこで上条美琴と御坂美琴は顔を見合わせて、同じ顔で大きな声を上げて同時に笑った。「当麻ー、おまたせー」 上条美琴が土手から戻ってきた上条を『やっぱりかわいいー、連れて帰りたーい』と騒いで抱きしめる。 上条が焦りながら『お、おいこらよせって』と上条美琴を引きはがそうとする。 それを見た美琴のこめかみにビキリと青筋が立つ。「……で、どんな感じ?」 分かってても堪えきれない何かに美琴が拳をブルブルと震わせながら上条美琴に問いかけると、上条美琴は人差し指で天を指し示して「見える? あれが、私をこの時代の外へ吹っ飛ばそうとする力って奴よ。私を追っかけて発生するなんて、まるで掃除機ね。やだなー、推測通りになっちゃった。向こうに帰ったら論文の書き直しだわ」 見上げた空に黒く大きな穴が、渦を巻くように開いていく。 穴は、まるで空に浮かぶ悪意の塊のようだった。 空に開いた巨大な穴から、黒い光が美琴(仮)の両肩にゆっくりと降りそそぐ。 世界の摂理が、いよいよ美琴(仮)を『外』へはじき出すべく干渉を始める。「……で、このままぼーっとしてっと私はあれに吸い込まれちゃうと思うから、アンタは本気の電撃をよろしくね。で、当麻は最後に、力いっぱい私に向かって右手をぶつけて。……いい?」「ホントにそんなんで帰れんのか?」 この時代に未来の情報を残さないために、上条は『美琴』が未来に帰る手段について、詳細な説明を聞かされていない。「あれにつかまったら私は一巻の終わりだからね。当麻は私の足元に伏せて、準備してて」 美琴が走って上条美琴から距離を取ると「……では、遠慮なく……」 美琴は空に向かって右手を掲げる。 バチバチという火花は、やがて青く揺らめく閃光に、 閃光は大地と空をつなぐ火柱に、 何かがはじけるような音は、やがて足元を震わせる轟音に変わった。「……いけえっ!」 美琴から虚空へ、虚空から上条美琴に向かって、一〇億ボルトに達する光速の雷撃の槍が発射される。 同じように右手を空に掲げた上条美琴が空から降る雷撃の槍を受け止め、即座に演算を展開し、その身に受けた電気を全て自分の中に蓄えようともがく。「……、大丈夫か?」 上条美琴の足元にしゃがみ込んでいた上条がおそるおそる目を開けて見上げると「だい……じょうぶ……演算は成功、充電は……完了、ってね。レベル5同士の電撃の交換なんてやった事ないから本当に一か八かだったけど」 上条美琴は少しだけ笑って「ありがと、手伝ってくれて。当麻に会えて、あの子に会えてよかった。……当麻」「……何だ?」「一〇年後の世界で会いましょ……必ずよ」「ああ。それじゃ……行くぞ」 上条美琴が空に向かって伸ばした右手から、細い糸のような光が虚空に開いた穴に向かって伸びていく。「こっちはいつでもオッケー……これで向こうと『つながった』。あとはアンタの全力でお願い」「元気でな。……また会おうぜ、美琴!」 上条当麻は立ち上がり、大振りに構えた右手の拳を、上条美琴に向かって突き刺すように、 振り抜いた。 何かを殴りつけた感触はなかった。 空に開いた穴はもう見あたらなかった。 上条美琴の姿はどこにもなかった。 上条は手応えのない拳を見つめ、呆然とする。「夢……じゃ、ねえよな」 上条が人の気配に振り向くと、そこには一瞬で最大出力を使い、虚脱状態となった御坂美琴が立っていた。「御坂?」 上条の呼びかけに、美琴は夢から覚めたように肩を一度震わせて「あれ? ……私、ここで何やってたんだっけ? マンガを探して、アンタに呼び出されて、ここへ来て……それから……何してたんだっけ……雷撃の……槍を……」 どういう理屈なのか分からないが、上条の前から一〇年後の美琴は消えていた。 どういう理屈なのか分からないが、御坂美琴の記憶から一〇年後の美琴の事は抜け落ちていた。 詳しい事情を何一つ聞かされていない上条は、『私、こんなところで何してたんだっけ』という美琴の問いに答えられない。 だから、上条は笑ってこう言った。「お前、立ったまま夢でも見てんじゃねーの?」「ゆめ? ……そっかこれ、ゆめなんだ……だったら、ゆめなら、いいよね……」 夢と現実の境目が見えなくなったような口ぶりで、美琴が何かを呟きながら、ふらふらと上条に歩み寄る。 おぼつかなげだった美琴の歩みがピタリ、と止まった。 どこかぼんやりとしたまま、肩の力が抜けたままの美琴は、上条を見上げるように「あのさ。私は、アンタの事が―――――――――――――――」「――――――――――――――――――――――――美琴ッ!」 重いドアを蹴飛ばして、一人の男が美琴の名前を叫んで病室に転がり込む。「病室ではお・し・ず・か・に」 ベッドの上の上条美琴は、人差し指を唇に当てると、床に這いつくばるように病室に飛び込んできた上条当麻に微笑んだ。「馬鹿野郎! 実験の最中に姿が消えたって聞いて、俺は死ぬほどビックリしたんだぞ!? 無事か? 痛いところはねえか? 気分はどうだ? 熱は?」「大丈夫よ。『向こう』からの時間移動に成功したけど、戻ってきた場所がまたしても歩道だったから、転んでちょっとすりむいただけ。念のため精密検査を受けたけど異常なし。今夜はここにお世話になるけど、明日には退院できるから」「そうか……よかった……」 上条はほっと安堵の息をついて、備え付けの見舞い客用パイプ椅子に座り込む。「お前がこの学園都市で最高レベルの電撃使いなのは知ってるけど、だからってもうあんな実験に参加するのは止めてくれ。俺の寿命が縮んじまうよ」 上条は硬く目を閉じ、首を横に振る。 美琴はそんな上条を見て微笑むと「当麻も過去にこの『私』と出会ってんだから分かってる通り、今回の実験結果は『起こるべくして起きた失敗』だもん。今回の失敗を糧に、より安全な時間移動を目指すつもりよ、私は」「だけど俺は……」「ホント、当麻は頭が固いわよね。一歩でも前に進もうとする夢と意欲に溢れてて良いと思うんだけどなー、時間移動って」「夢に溢れてんのは結構だけど、俺を悲しみの涙で溺れさせないでくれよ。お前がいなくなったら俺はどうすりゃいいんだ」「あはは、ホント当麻って甘えんぼさんね。昔の当麻が嘘みたい。昔の当麻は、あれはあれでかわいかったけど、こっちの当麻もかわいいわねー」 美琴はぎゅうううっと上条の頭を抱え込んで抱きしめると「そう言えばさ、向こうの当麻が『私』に言ってたんだけど……『外見は好みなのに性格で全て台無し』ってどういう意味かしら?」 そのまま上条の頬をぎゅううっとつねる。「いはいいはいいはい!(いたいいたいいたい!)そ、そんな昔の俺が言った事なんて責任取れっかよ! 大体、その頃の俺はお前とまだ付き合ってもいなかっただろ!? だからつねらないでごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」 美琴は上条の頬から手を離すと「でもさ、こうして当麻と私が一緒にいるって事は、向こうの私はうまくやったみたいね」「……一〇年後のお前がいなくなって、『お前』の記憶がすっぽり抜け落ちたお前が、寝ぼけてるんだと思って俺に告白してくんだからビックリだったな。お前がもっと素直になってくれれば、俺から告白しに言ったのに」「……だったら時間移動で歴史を変えてくる?」「止せよ、『今』の俺達の幸せが壊れちまうって。ともかく、約束通り一〇年後のお前に会えて良かったよ、美琴」 とある病院のとある個室で、時間移動から帰ってきた少女と時間移動に出くわした少年が笑いあって、時間が過ぎていく。 一〇年前の二人に思いを馳せて、一〇年後もこうして笑い会える事に感謝して。 一〇年前の二人と、一〇年後の二人の時間移動騒動劇は、こうして幕を下ろした。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/203.html
2スレ目ログ ____ ________________ 2-34 D2 ◆6Rr9SkbdCs Safest_Place_to_Hide 2-46 ぐちゅ玉(1-337) そして親衛隊は釘をさす 2-63 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 6 2-98 ぐちゅ玉(1-337) 天草式MMR 2-107 2-107 小ネタ よくあるソレなショートストーリー 1 2-113 2-107 小ネタ よくあるソレなショートストーリー 2 2-117 小ネタ 科学サイドと魔術サイドの戦争が終わり数年後 2-129 小ネタ っつか御坂も風邪なんてひくんだな 2-132 2-107 小ネタ よくあるソレなショートストーリー 3 2-140 カミサカ ◆somJVmVTuY 小ネタ そんな足じゃ寮まで帰れねーだろ? 2-150 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 7 後"日"談その1 2-162 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 上条さんがまた入院しました。 2-167 2-164 一端覧祭 1 2-178 ぐちゅ玉(1-337) 心を奪われ、射ぬかれ、包まれて 2-196 D2 ◆6Rr9SkbdCs とある二人の教育実習(キンダーガーテン) 2-213 スピッツ ◆Oamxnad08k もしも美琴が上条の妹だったら 2-232 ∀(2-230) とある帰り道 2-253 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 大覇星祭、閉会式直後。 2-261 ぐちゅ玉(1-337) 橋の下の決闘・上条vs黒妻 2-271 2-164 一端覧祭 2 2-288 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―幸福の美琴サンタ― 8 後"日"談その2 2-295 寝てた人 ◆msxLT4LFwc 当麻と美琴の恋愛サイド ―帰省/家族― 1 プロローグ 2-301 小ネタ あの鉄橋 2-303 2-107 小ネタ よくあるソレなショートストーリー 4 2-308 2-164 一端覧祭 3 2-323 ぐちゅ玉(1-337) とある両家の元旦物語 1 プロローグ 2-326 ぐちゅ玉(1-337) とある両家の元旦物語 1 前編 2-337 ∀(2-230) 嫉妬する上条さん(美琴視点) 2-364 2-107 小ネタ よくあるソレなショートストーリー 5 2-392 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 上条さんのお見送り 2-394 2-164 一端覧祭 4 2-416 ぐちゅ玉(1-337) とある両家の元旦物語 2 中編 2-431 ∀(2-230) やくそく 2-446 2-107 小ネタ よくあるソレなショートストーリー 6 2-450 D2 ◆6Rr9SkbdCs Two_of_us 2-476 スピッツ ◆Oamxnad08k 記憶喪失 2-503 2-502 小ネタ 超電磁砲原作漫画第一巻85ページの空白 2-540 腹黒タヌキ(2-539) 小ネタ 美琴さんのイマジンブレイカーのマネ 2-545 2-502 小ネタ 女の子の気持ちが分かる本 2-552 ぐちゅ玉(1-337) とある両家の元旦物語 3 後編 2-557 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ コロッケを作ります。 2-560 2-560 only my 美琴 1 2-581 スピッツ ◆Oamxnad08k 男なら一度は憧れるアレ 1 2-602 ∀(2-230) 不幸を背負って 2-617 ∀(2-230) バイト生活 1 0日目 2-618 ∀(2-230) バイト生活 1 1日目 2-632 2-631 少女の奏でる旋律は―― 1 2-644 2-560 only my 美琴 2 2-666 2-560 only my 美琴 3 2-677 2-676 とある二人の休日 2-698 ぐちゅ玉(1-337) 美琴と美咲 2-713 七国山の栗鼠 ◆t9BahZgHoU とある恋人の日常風景 1 序章 新たな物語の始まり ~ 二人の想い 2-714 七国山の栗鼠 ◆t9BahZgHoU とある恋人の日常風景 1 第一章 お姉様 ~ 十一月某日 2-721 豚遅(1-892) とある学園の執事喫茶 2 とある学校の執事喫茶 2-736 2-560 only my 美琴 4 2-753 ∀(2-230) 嫉妬する上条さん(上条視点) 2-764 SAS(2-763) 俺の名を言ってみろ! 1 2-772 2-631 少女の奏でる旋律は―― 2 2-785 七国山の栗鼠 ◆t9BahZgHoU 小ネタ ゲーセンdeデート 2-790 2-164 一端覧祭 5 ナイトパレード 2-800 ぐちゅ玉(1-337) とある両家の元旦物語 4 後編 2-817 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 8 2-836 スピッツ ◆Oamxnad08k 男なら一度は憧れるアレ 2 2-848 まっくろくろすけ(2-845) 小ネタ BAD END 2-869 SAS(2-763) 俺の名を言ってみろ! 2 2-890 腹黒タヌキ(2-539) ・・だからお前は笑っていて良いんだよ・・ 2-909 ◆pAn3AKtpUw X-DATE 9 アフター 2-929 2-560 only my 美琴 5 恋人編 2-943 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ 本日はバレンタインデー 2-947 ぐちゅ玉(1-337) 初春の!ふにゃふにゃハッキング! 2-959 2-958 小ネタ もし上条さんと美琴が同じ学校の先輩、後輩だったら 2-975 D2 ◆6Rr9SkbdCs 舞い落ちる雪のように Adieu_l Hiver. 2-992 ∀(2-230) バイト生活 2 2日目 2-1000 ◆pAn3AKtpUw 小ネタ Go to part3 ▲
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/136.html
小ネタ 第12話「AIMバースト」の放映が終わりました。 美琴「っていうか、一山越えたら水着回って安くない?」上条「さぁな。出番のない俺には関係ないし。というよりなぜお前が俺の部屋でTVを見てるんだ?」美琴「常盤台の寮じゃ深夜におおっぴらにTV見られないから、困ってたのよねー。ところでアンタ、私がみっ、水着で出演するっていうのに興味ないわけ? そもそも、予告映像が私だけ公開されてないのよ? 来週気にならないの?」上条「ない。中学生(ガキ)の水着姿見て何がうれしいんだか。土御門じゃあるまいし俺はロリコンじゃねぇっつーの」美琴「……………………」上条「それにあれだろ? その回のほかの出演者だって、たしか全員白井と同じくらいの歳なんだろ? だったら……」美琴「固法先輩はたしか高校生だったと思うけど……ってちょっとアンタ! なにリモコン握りしめてるわけ? 年上巨乳属性が出演するとわかったとたんに予約録画とかやる気見せてんじゃないわよ!!」上条「うぉわ! ちょっと待て御坂! ここで放電するなやめろデッキが壊れるだろ!!」美琴「……ふーっ、ふーっ」上条「ああ、俺のデッキが……不幸だ」美琴「……そ、そんなに見たいってんなら、私のみ、み、見ればいいじゃない」上条「………………フーッ」美琴「そのムカつく耳かっぽじり動作はどういうことなのか説明して欲しいわね」上条「だって、今更水着とかの露出で来られてもなぁ。お前気がつくと俺の隣で寝てるし勝手に俺のYシャツ着てっから胸元やら何やらいろいろ見えてるしだいたい日頃のハイキックで短パン履いてるとはいえ太ももの付け根とかしょっちゅう公開中じゃねぇか」美琴「…………うぅ」上条「そもそも、お前の寮生活はどうした! 何で朝目が覚めるとお前が俺にしがみついて寝てるのかそっちから説明しろそっちから」美琴「……………うぅぅ」上条「御坂、故郷のお父さんお母さんは泣いてるぞ?」美琴「……じゃあアンタはどうして、私がアンタのベッドに潜り込んでるのに気づいていながら何もしないわけ?」上条「何かして欲しいのかよ! 公共良俗的にまずいだろ!! 上条さんの鉄壁の理性に感謝しなさい!!」美琴「何かするって、何想像してんのよアンタは! あ、あ、アンタだってつまり人の胸とか足とかじろじろ見てるワケじゃない! 何でそこで何も言わないのよ!!」上条「…………」美琴「…………」上条「…………、夜も遅いし、お前が何で俺の部屋にいるとかそう言う話はもうどうでもいいから、寝ろ。ついでにお前がすでに俺のYシャツを装備していることにもツッコまないから」美琴「うん。…………おやすみ」上条「御坂」美琴「何?」上条「あんま端っこ行くとベッドから落ちるから、も少しこっち寄れ」美琴「うん」上条(いくらコイツが中学生でも背中合わせに女の子では俺の理性が平常心がぁぁぁぁぁあぁもう不幸だぁぁあぁあぁぁぁぁぁ))美琴(こんだけ密着してるのに何で手の一つも出してこないのよコイツはぁぁぁぁあぁぁぁぁっ)
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/262.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/only my 美琴 夕日が輝く中、上条当麻はとあるスーパーの来ていた―――特売日 そう本日は週イチの特売日―肉.魚.野菜.卵―が激安で売り出される 店の規模は決して大きい方ではない、特売日ともなれば客で店の中は一杯になってしまうほど 店内がザワつく中、彼は静かに特売開始の合図を待っていた―店の入口に出てくる卵を取り、店内左手の精肉スペースへ向かう―この2つは何としてもゲットする構えでプラン立ても完璧 「カンカン♪カンカン♪カンカン♪」特売開始の合図のベルが鳴り響く、彼は目の前に出てきた卵をゲットする為に手を伸ばした……「ちょっとアンタ!」――この声? ビリビリ!? 「(……残念だったな、今は構ってる場合じゃないんですよっと)」彼は最初のターゲット「卵」をゲットし次のターゲットを捕らえに行く。 「ちょっと無視してんじゃないわよ! って……行っちゃった」彼女は御坂美琴、常盤台のエースと呼ばれレベル5のエレクトロマスター(電撃使い) 「(こうなったらアイツが出てくるまでここで待っててやるんだからっ……)」 「(……っていつ出てくんのよ!! もう40分くらい待ってるのに、ちょっと様子を確認する必要がありそうね)」 若干グッタリした様子で店内から上条が出てくる――「ふぅ……卵、豚肉、その他野菜類も大丈夫だな。ビリビリは……帰ったか?」 「(な、何よこれ……入れたと思ったら抜け出せないじゃないっ!)」常盤台のお嬢様が特売の殺伐とした空気に縁がある訳がなく……。 「待ち伏せでもされてる思って覚悟して店から出たけど、本当にいねぇ……って何で俺がビリビリを探してるんだ? 帰るか……?」 ―――20分後 「(あのバカの気持ちが少しわかったわ……しかし中に居なかったとなると…入れ違った!? 不幸だわ……)」 いつもの自販機近く、辺りが暗くなって照明に火が灯る。上条は結局美琴を探してしまっていた――家には帰らずに―― 「結局探しちまったなぁ……普段なら向こうから現れて言いたい放題言われて、そして追い掛け回され……」 そんな生活も――なんだかんだ言って嫌じゃなかった 「こういう時に限って会えないんもんだな、食料が痛む前に今度こそ帰るか!」上条は腰を上げて、家路に付くハズだったが――「やっと見つけたわよ……!」と後ろから声が聞こえる 「……逢いたかったぜビリビリ~!」荷物を置いて美琴へ向かいダッシュする 「な゛っ! (ど、どういう反応!? なんか変な感じがするわ……)」 「気がついたらオマエを探してたんだよな…俺は何をしてるんだか……」彼は笑っていた。 「ちょ、調子狂うわね……でもアンタ買い物の後でしょ? 早く持って帰らないと痛んじゃうんじゃない?」 「まあ、そうなんだけど……ビリビリの顔見れたし、今日の所は帰るとしますか…!」 「私には御坂美琴っていう名前があるんだから、いい加減覚えなさいよっ!」 ――今日は追いかける気になれないわね 「(って……あのバカ、袋置きっ放しじゃない! 不幸というよりドジなんじゃないの!? そうそう追っかけないと、まだそこまで遠くには行ってないはずよね。アイツの行った方向を追っかければ……」 ―――上条当麻、自宅に到着 「とうま!ご飯ご飯!」 「わっーてるから、とりあえず本を片付けとけ」――!?やけに手が軽い――恐る恐る手元を見ると……無論手ぶらである 「……不幸だ―!!! ちょっと待ってろ! 忘れた買い物を回収してくる!」ガタン!とドアを締め家から飛び出して行く」 「と、とうま……? おなかへった…」 「(方向はこっちで合ってるわよね……何で走ってるアイツを見つけられて歩いてるアイツを見つけらんないのよっ!)」 「ビリビリを探すなんて慣れない事をしたからこうなったんだな……」と一人呟き帰ってきた道を走る 「あ……ちょっとアンタ! 待ち……って通り過ぎちゃったじゃない、こうなったら…っ!」美琴は電撃を空に向かって飛ばす、辺りは暗いので目立つだろう。 「おっ…花火……じゃないな、あれには見覚えがある! 間違いないビリビリだ」電撃の見えた方へダッシュする 「やっと見つけた……買い物忘れるなんてアンタはどういう神経してるのよ……」 「サンキュ~ビリビリ、それが無かったら今夜の夕飯はパンくずだったから助かったぜ……」 「どうあれ見つかって良かったわ、もし見つかんなかったら一晩中さまよってるところよ」 「わりぃわりぃ、じゃ荷物は引き取らせて頂きますっ!」 「ここまで来ちゃったんだから、家まで付き合うわよ。ここからそんなに遠くないんでしょ?」 「そこまでしてもらうのはアレだけど、ここまで来てくれちゃったんだしお願いする。家は歩いて3.4分の位置にあるから少し話ながら歩けばすぐ着くと思うぜ」 二人は袋を一つづつ持って上条の自宅へ向かっている、辺りはすっかり暗くなって人通りも少なくなっている 「(な、何話そうかしら……)」 「(……こういう時はどういう会話をしたら良いのかサッパリだ……)」二人ともトホホと言った感じで足を進める 「ホ、ホラ! 見えてきたぜ」 「あ、あれがアンタの家…(結局何も話せないまま着いちゃったわね……) ―――エレベーター前に到着 「ここまでで良いぜ。 今日は振り回して悪かった! 埋め合わせはまたいつかするからさ」ササッと荷物を受け取り――待たな!――「ま、待ち……」 「(結局最後まで言えなかった……埋め合わせとやらを口実に使って次は私が振り回してあげるんだからっ!)」 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 快晴と言っても良いだろう、それくらい綺麗な青空が広がっている。 「ちょっと待ってろ……今取ってやるからな……」 「申し訳ありません……」 「(ん~~~~~よし!)……ほらよっと、もう落とすんじゃねぇぞ」 「ありがとうございます!」 「じゃ、俺は行くから」 「ちょっと待ってください! 是非お礼をさせてください」 「お礼? そんなのいいって、それに誰が見ていてもああしてたぜ。たまたま俺だったってだけの話、それに常盤台のお嬢様がこんな冴えない奴と一緒に居たら逆に迷惑かけちまうんじゃねぇか?」 「そうですか……ではお名前だけでも!」――上条当麻――「じゃあな!」 「上条当麻様……か」 上条当麻は人助けをした、でも彼にとっては側溝に挟まった財布を取る事くらいなんてことはない、それは――いつもの日常――だけどちょっと狂ってしまう 翌日、本日も快晴なり――― 「こんな所まで来てしまった……昨日一日顔見なかっただけなのになぁ」上条は常盤台中学の寮の近くにまで来ていた―目の前に顔を出すのはマズイんじゃないか―と判断し近くまで 上条は家で必死に考えた―有意義な休日の過ごし方―について、とりあえず飯だけ用意しておけば家からは出れる……そして考えた結果が―御坂美琴に逢いに行く― どうしても彼女の事が頭から離れない……―おととい別れ際に何か言いたそうにしていたし、埋め合わせもすると言った―もちろんこれは「御坂美琴に逢いに行く」理由、口実の一つでしかない 彼は自分の気持ちをコントロールするという観点なら普通の人間を超えてるであろう。我を保てなくなれば「負け」を意味するからだ、彼はどんな時でも自分を強く持っている でも彼女の事を考えると少し乱れてしまう……そう上条は―御坂美琴に負けてしまっていた―そして一歩を踏み出す、少しでも早く彼女に逢うために……。 「お姉様! どこへ行きますの?」 「ちょっと…ね、私だって色々忙しいのよ」と言い部屋を出て行く 「(また争いごとですの…? 昨日わたくしと買い物に行った時もなんかうわの空と言った感じでしたし……ま、深くは考えないようにしましょう)」 「よぉ! ビリビリ!」 「ア、アンタこんなところで何してんのよ! ちょっと来なさい!」ちょっと離れたコンビニの前まで美琴は上条を無言で引っ張って行った 「で、どうしたんだ……俺とウワサされたくないとかそっちのお話?」 「と、とんでもな…じゃなくて! 今アンタのウワサで持ち切りなのよ……」 「えっと…どういう事でしょうか? 悪いウワサ立てられる事はしてませんよ……?」 「逆よ逆! アンタこの前うちの子を助けなかった? その子ったら私に……」 「素敵な殿方に出会えました、困っていた所突然現れて助けて下さったんです。お礼をさせてくださいと申し出ても「お礼なんか要らない、誰が見ててもああしてたぜ」と言い去っていかれました…… でもお名前だけは聞けました……」私は言ったわ―まさか……上条当麻じゃないわよね…?―そしたら「御坂様お知り合いなのですか!? そうなら是非連絡を取って頂きたいのですが…」 「うちの学校でも物凄く大人しい子が、アンタの話をする時だけ物凄く嬉しそうに話してたわ……で? アンタはどうする気なのよ、会うなら寮の目の前に呼び出すけど」 「そこまでされて、会わないってのは男としてどうなの…? っていう話になりそうだけど、俺は遠慮させてもらうぜ……今日はオマエに逢いにこんな所まで来たんだからな」 「えっ…? わ、私? (コ、コイツ……私と同じ事考えてたって言うの?)」 「御坂! 暇なら付き合え、埋め合わせしてやるから!!」今度は上条が美琴の手を掴み走り出す……。「(こ、これって手をつないでるって事…よね)」美琴は別の気持ちを働かせていた。 駅前の喫茶店にて――― 「今日は俺のおごりだ、遠慮せずに好きなだけ飲んだり食ったりしていいぞ! まあ二千円札のホットドッグのようなものは食べさせられませんが……」 「ううん、気持ちだけでありがたいわよ。(休日の喫茶店に二人……こ、これってデートなんじゃ……いやそんな事ないわよね、絶対にないわ)」 「どうした? 元気ないのか? 体調が悪いなら言えよ。寮まで送っていってやるから」 「そ、そんなんじゃないから安心して! ホラ……元気でしょ?」と指から電撃を出して上条にアピールする 「なら良いんだ……沈んだ顔をしてるオマエは二度と見たくない、それだけだから」 「(コ、コイツったらやっぱり無自覚でこういう事を言うのね……バカ……)」美琴は赤くなる 「御坂、顔赤いぞ……やっぱり熱でもあるんじゃねぇか?」上条は右手を伸ばし、美琴のおデコに手をあてる……「ん~ちょっと熱いかもな……」 「(さ、触られてる……)ア、アンタのせいでしょうが……バカ……」 「(やっぱり分からないなぁ……)」 そんなやり取りをしていた二人だが、窓の外から声が聞こえる。二人とも聞き覚えがあるので窓の方を向くと…… 「御坂様と上条様ではありませんか!」美琴のとっては後輩、上条にとっては助けた人……二人とも「「(*1)」」と心で思っていたのは言うまでもない。 店員にイスを一つもらい、丸いテーブルを3人で囲む 「あ、貴方はどうしてここに……?」 「本日は友人達とショッピングの予定です、待ち合わせまで20分くらいあるので散策してたら御坂様と上条様がお茶をしてらして……もしかしてお邪魔でしたか?」 「そ、そんな事ないわよ! こ、コイツとはそういう関係じゃ全然ないから!!」 「あの…御坂さん? そう全力で否定されると上条さんもショックという物を隠せなくなりますよ……?」 「(仕方ないでしょうが! これが黒子の耳にでも届いたらどうなるか分かったもんじゃないんだから……わ、私だって否定したくてしたわけじゃないんだからっ)」心の中で否定した自分を全力で否定する少女の姿がここにはあった。 「お二人の出会いを聞いてもよろしいでしょうか……?」 「わ、私がコイツに助けられたのよ……」 「御坂様も助けられたのですか!? でも御坂様は常盤台のエース……上条様は一体どのような能力をお持ちなんでしょう……?」 「能力? そんなものねぇよ……目の前に困ってる人が居たら手を貸す、もしくは助けてやる。放置なんざ絶対に出来ねぇ。でも御坂は特別だ、俺はコイツの沈んでる顔を見て本当に苦しかった…… もう二度とあの顔は見たくねぇ、だから俺は御坂を守ってやる事に決めたんだ。何があっても……」 女性二人は赤くなる……その様子を見た上条も赤くなる…… 「そ、そろそろ待ち合わせの時間なので失礼します! お邪魔しました、あっこれ料金です。お釣りはこの前のお礼だと思ってください」上条が呼び止める暇もなくササッと去っていく…… 「えっ~と、常盤台のお嬢様というのは紅茶一杯飲んだだけで一万円札を置いて行かれるんですか……?」 「五千円ならわかるけどさすがに一万円は多すぎるわね……」 「それでもわかんねぇよ……とりあえずこれは返しといてくれ、どうせ寮なら会うんだろ?」 「で、でもお礼って言ってたんだからこういう時は素直に貰っておきなさいよ」 「お礼ならもう貰ってるよ、あの子のお陰で言いたい事が御坂の前で言えた……なんていうか、もしかしたら俺はオマエの事を……」ピシャっと上条の顔に水がかかる 「で、出直して来なさい! 私はいつでもアンタを待ってるから……」と言ってその場を去る美琴、その後ろ姿は心なしかとても嬉しそうだった……。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ あれから数日――― 「―――出直してきなさい…か」 帰宅途中、上条は夕焼けに染まったソラを見上げながら一人呟いていた。 実を言うとあれから美琴には会っていない…機会が無かったといえばそれまでだが、自分から動いてもいない。 本日はスーパーの特売日、開始時刻に間に合わなかった上条はダメ元で野菜だけでも… という気持ちでスーパーへ向かう。 「お、遅いじゃない! 何時間待たせるつもり?」 そこに御坂美琴が居た、両手に買い物袋を抱えて。 「お嬢様がスーパーで買い物ですか~?」 「ま、まあ…そういうこと」 「じゃ、ちょっと残り物の野菜でも買ってくるぜ!」 「ちょっと待ちなさいよ!」 今回はしっかりと上条の耳に届いたようだ、上条は振り向く。 「な、なんだ?」 「今日はアンタの家まで行ってご飯を作ってあげようと思って、材料を仕入れたのよ」 「へ…?家に来る?俺の?」 「ダ、ダメとは言わないせないわよ」 「ちょっと待っててくだせい…」 上条は一旦美琴の視界から消えるように走り出す。 「ア、アイツ電話出るかなぁ?」 「えーっと…(ガチャガチャ…)これかな?」 「もう繋がってますよ~!!!」 「そ、その声はとうま! 帰りでも遅くなるの?」 「い、いや~違うんだ、今日は小萌先生の家で焼肉をやるってウワサを聞いたので教えてやろ~かな~って」 「焼肉!?」 「そ、そう! だからあっちに行った方がお得だぞ~分かった?」 「うん!わかった! そういえば…でんわって一分話すと寿命が一年…!?(ガチャン!)」 「そういえばそんな事吹き込んだ記憶が…まあ、いっか! でも明日小萌先生に何言われるか分かったもんじゃない…」 美琴の元に戻る上条、辺りは徐々に暗くなって来た。 「じゃ、ゆっくり歩いて行くか」 「今誰かと話してなかった…?」 「(ギクッ!)え、ええまあ…色々と複雑な事情が…」 「今更何があっても驚かないわよ、それにアンタと居ると人生が退屈じゃなくなるわ~」 「どういう意味で言われてるのか分かりかねますが…そうだ袋一つ持ってやるよ、この前のお返しだ」 「じゃ、お願いしますっ! で、でもアンタに持たせた途端袋が破けたりしないわよね…?」 「さ、さあ…どうでしょうか?」 上条は実際に破けた経験があるので強気には言えない。 「や…破けなかったな!」 「何袋一つ持つのにそんな慎重になってるのよ…ひょっとして、破けた経験お有りで?」 「あったらどうする…?」 「アンタが自販機に二千円呑まれたことに比べればなんてこと…って!なんで泣いてるのよ」 「なんで思い出させるんですか! あの飲み物を処理するのにどれだけかかった事か…」 「ハイハイ、ごめんごめん。今度は私が飲み物おごるから…ねっ?」 今回は会話が弾んでアッと言う間に上条が住んでいる寮が見えてきた。 「御坂…聞いてくれ!!」 「な、何よ! いきなり声張り上げて」 「俺は…オマエの事が、何と言うか…」 「あ~あ~あ~その話しはまた後! 今はアンタの家に行く方がさ~き。分かった?」 「は、はい…」 上条当麻、自宅前――― 「御坂、ちょっと待っててくれ! あんまりにもひどい状態の家にあげる訳には行かないから…な?」 「わ、分かったわよ、それじゃ袋…痛んじゃうから先に冷蔵庫に入れておいてちょうだい」 「お、おう! わりぃな」 「(よし! インデックスは出発してる…んだけど、この食い散らかした後のような…これは外で待ってて貰って正解だな)」 上条は散らかってる本、食器を手際よく片付ける。周りは汚くとも食器そのものは洗ってもないのに何故かピカピカしている。 「(これだけ片付ければ良いだろう、食器の方が洗い残しで説明が付くだろうし)」 「わりぃ、待たせたな。あがってくれ」 「謝られる程待ってないわよ、5分かそこらじゃなかった?」 「時間はどうあれ女の子を外で待たせたんだから、謝るのは当然ってもんだ」 「で、ここがアンタの部屋…?」 「食器洗っちまうから、ベッドの上でも座って待っててくれ」 「べ、べ、ベッドの上!? ア、アンタ何考えてんのよ!」 「ちょ!家の中でビリビリはマズい! 座る場所は何処でも良いですからっ!」 結局ベッドの上に美琴は座ったわけだが、自分で意識してしまってそういう事を考えずにはいられない状態になっている。 「(そ、そんな事なんかあるワケないじゃない…何意識してるのよ、バッカみたい)」 「御坂? 食器が洗い終わったのでよろしくお願いしたいのですが?」 無反応である、上条は手を拭き美琴の元へ向かう 「お~い! ビリビリ~?」 上条は揺すってみる事にしたが、これが仇となり押し倒す形になってしまった。 横に倒れたので上に乗っかってるというわけじゃない、ただ年頃の男女だと嫌でも意識してしまうシチュエーションなのは間違いない。 「!?……ア、アンタねぇ、順番ってものがあるでしょうが!順番ってものが!」 「へ?順番…?」 「んっ…(や、ヤダ! 私ったら何を言ってんのよ…これってOK出しちゃったようなもんじゃない!) と、とりあえず!ご飯を作るから、そこどいて!」 「は、はい!」 御坂美琴、上条宅のキッチンにて――― 「(とりあえず、一通りの調味料と食器、調理器具は揃ってるわね…。 でもあのバカはあんな事があった後だってのに、漫画なんか読んじゃって…)」 買ってきた物を見ると、どうやら煮物と魚系の食事を作る事は読み取れた 美琴は材料を切り、魚に至ってはしっかりと内臓も取り出し。非常に慣れた手付きである。 その頃上条はというと――― 「(大体ああいう性格の奴は張り切ったら張り切っただけ失敗に向かっていくんだよな… ここは運に全て任せて、出来上がりを楽しみに…待ってる間は暇だから漫画でも読むか)」 と電撃○王と書かれた本に手を付ける。 それから数十分後――― 「(味はヨシっと! これならアイツも喜んで…くれるわよね) 出来上がったから、テーブルまで運ぶのを手伝ってくれないかしら」 「やっと完成か! 腹へってたから待ち遠しかったぜ!」 上条は美琴が作った料理を見て……。 「え~っと…こんな家庭的スキルを何処に隠し持っていたんですか…?」 「これが筑前煮、それでこっちが秋刀魚の塩焼き、でこれがお味噌汁、こっちがミョウガとキャベツの浅漬」 「これ全部食べてよろしいんでしょうか?と上条さんは確認を取ります」 「あ、あと多めに作っておいたから、後で保存容器にでも入れて冷蔵庫の中にしまっておきなさい。煮物は二日目が美味しいんだから」 「で、では…いただきますッ!」 あんまりガッツくのはみっともないと思っている上条は少しづつ箸を進める 「ど、どう? なかなかイケてると思うんだけど…って何でここでも泣いてんの!?」 「何が不幸だ…俺ってば物凄く幸運(ラッキー)じゃねぇか…」 「ちょっとアンタ!聞いてるの!?」 「ええ、もちろんですとも! これ食べて本当に御坂を嫁に欲しいと思いました、ハイ」 「よ、よ、よ、嫁!? は、は、いちいち話が超展開すぎるのよ、アンタは!」 上条当麻、自宅にて――― 「ふぅ~。お腹一杯!人生に希望の光が差し込みました!」 「んな大袈裟な…で、でもこんなに綺麗に平らげるとは思ってもいなかったわ…」 「今までの不幸はこの素敵イベントの伏線でしたか~納得、納得!」 「何一回キリ見たいな言い方してるの?アンタは」 「え…また作りに来て下さるんですか!?」 「ア、アンタがどうしてもって言うんなら作りに来てあげない事もないけど…ってそんな目で見つめないでよ!」 「ぜ、是非よろしくお願いします! でも作りに来て頂くだけではなく、美琴先生の指導も受けたいと思っているのですが…」 「(い、いまさり気なく美琴って言ったわよね…)しょ、食器片付けて来ちゃうから!つ、ついでに飲み物も持ってくる!」 「洗い物は後でやるから、そのまま放っておいて良いぞ!」 美琴はササッと食器を台所に運び、コップを取り出すために棚を開けるとそこには… ――カエルのキッチンタイマーとカエルのフライ返しが未開封の状態で置いてあった―― 「ちょ、ちょっとアンタ来なさい!」 「……、声が裏返ってるぞ…?大丈夫か?」 「こ、このカエルグッズは何処で手に入れたのか吐きなさい」 「えーっと、確か大分前にあった商店街の福引で俺がティッシュ以外の物を初めて当てた記念に取ってある奴」 「これ物凄く持ち帰りたいんだけど……ダメかな?」 「(そ、そんな目で見つめられたら、俺がお持ち帰りしたくなっちゃう。あ…ここ家なんだけどさ) どうぞどうぞどうぞ! そんな物で良ければ全部持ち帰っちゃってください!」 何かに火が付いた美琴は――― 「ちょっとアンタの家捜索させてもらうわよ!」 「……えっ、ちょっとお待ちを!怪しい本とかないですから!ってカエル…?」 「(コ、コイツの家…宝の山じゃない! ゲコ太の紙袋にボールペン…。でもなんでこんなに?) アンタ、どこでこんなに仕入れてくるのよ? 限定品も混ざってるわよ」 「そ、それはアイスクリーム屋のポイントを溜めて貰った奴とか、助けたお礼にって渡された奴とか…まぁ色々」 「不幸体質ってのも悪くないわね…ってアンタってそんな目立たない所でもかなりの人助けをしてるの?」 「目の前で起こるもんだから、放って置けなくてな…この前の常盤台の子だってそうだぜ?」 「でもアンタはそして駆けつけてもくれる…それで受け止めてもくれる…」 「ん?なんか言ったか?」 「ううん! 何でもない、とりあえずこれは貰っていくわよ?」 「おう、持っていってくれ。今日の礼って言ったら安すぎるかもしれねぇけどな」 美琴はようやく落ち着き、二人で向かい合うように再びテーブルの前に座る 「なにわともあれ、今日はサンキューな御坂」 「感謝されるような事はしてないわよ、それにグッズもこんなに貰えるんだもん」 「それを探してる時のオマエは物凄く楽しそうで輝いてたぞ」 ―と言って上条は笑う 美琴は一瞬黙った後に―― 「この前から何か言いたそうにしてたわよね? 今なら聞いてあげても良いわよ」 上条の顔付きがグッと引き締まる―― 「―――やっと言えるのか、俺はこの時を待ってた」 「今までは言う勇気がなかっただけで、心の何処かでオマエの事をずっと想っていた。 俺は御坂美琴を守ってやる――それは決めていた、いや誓っていた。でも本当にそれだけなのかってな。 いくら悩んでも結論が出て来なかった…でも気付かされたんだ。笑ってるオマエの顔を見る度に俺は幸せになれる。 ならその笑顔を守り通して、一緒に幸せになりたい…そう思った。でも見ての通り俺は不幸に見舞われてる…」 美琴は吹っ切れたような顔で―― 「そんなのどうでも良い事じゃない」 「え…?それはどういう?」 「アンタが不幸なら私が幸せになる手助けをしてあげるって言ってんのよ!」 「それってつまり…」 「その代わり条件があるわ、アンタは一生賭けて私の全て守る事…少しでも離れたりしたら絶対に許さないんだからっ!」 「ああ、一生賭けて守ってやる。何があろうと絶対に…。その代わり俺の隣から離れるなよ…美琴―――」 「うん、絶対に離さない…当麻―――」 二人はいつの間にか寄り添い、待ち望んでいたひと時を過ごすハズだった――― ガチャン!「とうま! 小萌の所で焼肉なんてやってなかったんだよ!」 「へ…? な、不幸だろ…?俺って」 「って短髪!とうまと何してるの!そこを離れなさい!」 「まあまあ、インデックス…ちょっとそのままキッチンへ行って、ほら~そこのお鍋の中見てごら~ん」 「む!これは…美味しい!美味しいよ、とうま!」 「アンタらねぇ……色々と突っ込みたい所があるけど、とりあえずぶっ放さないと気が済まないわ…」 キュイ―――ンという音が上条の耳へ届く 「ちょ、ちょっと美琴さん…? さすがにここはマズイのではないでしょうか、なんかいつもに比べてヤバそうだし… い、インデックスはお外に出てなさい…」 インデックスもさすがにマズイと思ったのか、鍋を持ち外へ避難する―― 次の瞬間、一直線に綺麗な電撃がキッチンの上条へ超至近距離で放たれた。 無論上条は突き出していた右手で反射的に防いだのだが、家はどうなったのかはご想像にお任せする。 ~完~ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/only my 美琴